ポートランドとインド人

 「骨休め」と称して、滞ってしまった翻訳の仕事をポートランドでやっている。昼ご飯を食べようと街に出ると、なんだかインド人が増えていた。
 三世代(6、70歳代の祖父母に、4、50歳代の息子夫婦とその小学生くらいの子ども)で歩いているのが典型。そしてとても親孝行な様子だ。タイ料理店で、タイカレーを食べている(インド人もびっくり!の味なのか)、下着売り場にもいる(サリーの下に、そんなにセクシーなブラをつけていたのか!)、子どもはピザを食べている(ペパロニ!肉だ)。サングラス売り場では、派手なのをかけて遊んでいる大人もいた(灼熱の国のひとでも、やっぱり太陽がまぶしいのだ)。

 この急なインド人増加の訳が分かった。この日は日曜日、パイオニア広場(Pioner Square) では催しがあり、今週はインド祭り(India Festival)だったのだ。テントが並び、出張レストランがいくつか。大繁盛だ。それぞれ、「南部インド風」「北部インド風」などと区別してある。日本で言えば「関東風」「関西風」のうどんやそばの違いといったところだろうか、カレーの色が違う。南部が赤くどろりとし、北部が黄色でさらっとしている。

 舞台で、インドの演歌のようなのをソロでおじさんが歌っている。いい声だ。抑揚をつけて歌うところが叙情的で、ちょっとサタジット・レイの映画を思い出す。インド、大地の歌。次に舞台に上がったのは、小学5,6年生の少年。インドのヒップホップだ。踊って歌うのだが、仕草にインド舞踏の影響が見られる。インド版ジャニーズJr.

 レストランとは別に、インド製品を紹介する業者のテントが並んでいた。はっと目を引いたのがトイレ。日本で外国製の「ウォッシュレット」を見たことがない。そこにあったのは日本人にはすごく物珍しい、インド製「ウォシュレット」。何という製品名にしているかメモするのを忘れてしまったが、何しろ温水や水が出てくる洗浄機能付きのトイレットだ。ボタンがリモコンのように独立しているものもあった。アメリカで「ウォシュレット」自体が珍しい。
 そこで、はたと気付いた。ヒンズー教だ!不浄に厳しい。トイレは「ご不浄」。以前からじょうろのようなものを持って、トイレに行くひとたちだった。さもなくば、左手だけで紙を持ってそれを使う。やっぱり左は不便だったのに違いない。ああ!「ウォッシュレット」普及するよね、この文化では。ちょっとした発見だった。