子どもを持つ親には心配なニュースが続く。
先日の岡山での誘拐監禁事件は、少女が無事みつかるまで、実にはらはらした。
「はらはら」ではちょっと軽いかもしれない。
このような事件が起こるたびに、実は息が「はあはあ」するくらいになる。
多分、軽いPTSD(Post Traumatic Stress Disorder)か。
Traumaticな経験がある。
小学6年生のある土曜日。
塾帰りの人通りの少ない道で、誘拐されかかった。
親には言っていない。
駐車場のそばだった。
見るからに弱々しい、今思えば25歳前後の男性が、「車が壊れてしまって修理を手伝ってもらえないか」と話しかけて来た。
「だれかがネジを押さえていてくれないと直せない」、と困っているようだった。
当時のわたしは、「しっかりもの」で「気が強い」、自分でもそうまぬけではないと思っていた。
手伝ってやろう、と思ったのが大間違い。
助手席でネジを押さえているわたしの上に、その「お兄さん」が覆いかぶさって来たのである。
そして、はあはあしながら、
「いくつ?」「おふろにはひとりで入るの?」と、始めは恥ずかしそうにだんだん図々しく、車の修理とは関係ない話をして来た。
「こりゃ頭がおかしい人だ」とすぐに思ったが、上から押さえつけられている。
怖い。
「心臓が口から飛び出す」ほど怖くなった。
でも声が出ない。
「ここじゃ直せないから、場所を移る」と言い出した時に、わたしは大決心。
息をため、はーっと吐く勢いで「背負い投げ」。
「お兄さん」がすっ飛んだ。
そのあとダッシュ(短距離は速い方でちょっと自信があった)。
それでもそのときに、「もうひとつ行かなければならない塾がありますから」と、ご丁寧にも言い訳を叫んでいた…。
もう、ばか。
このわたし自身の経験から、誘拐され(そうになっ)てしまう子どもの、少なくともひとつの心理が分かる。
「大人に失礼なことをしてはいけない」「困っている人を助けなければならない」と思う心。
まあ、まぬけだったわりには体が大きく、力で逃げられると判断し実行したのは、冷静といえば冷静だったのかもしれない。
ああ、よかった。
(週明けの月曜日、全校生徒に校長から「へんなお兄さんについていかないよう」と朝礼で注意喚起があった…。)
今、大人になって、親御さんや子ども自身に注意したいのは、いくら利口と思っていて、ニュースも読んでいる「しっかりもの」の小学生で、たとえ6年生であっても、正義感や親切心に訴えたり子どもの弱みにつけ込む大人に、簡単に騙されてしまうことだ。
犯罪心理の専門家の話にも、なるほどと思う。
夏休みだ。
みなさん、『That Is Not a Good Idea』のアヒルのように冷静に、そして「オオカミ」には決してついていかないように。
That is not a good idea!!!