『Hop on Pop』でhop〜キッズブックス英語スクール

今更ながら、Dr. Seussの本はよく考えられて作られていると感心する。
読めば読むほど、英語文化がまだまだ浅いわたしには発見がある。

アメリカが、戦後初めて「子どもたちの識字率が上がらない」と危機感を持った50年代後半から60年代。

Dr. Seussが心血を傾けたプロジェクトが、「I Can Read It All By Myself」がうたい文句のBeginner Booksシリーズ。

readingの「教則本」の側面と、芸術性のある「絵本」の側面を併せ持った子ども向けの本がないと気づいた彼とそのチームが目指したのが、その両面をもった本だ。

絵本としても楽しく、デザインや文も一流で、かつ、子ども自身で読めるよう語彙や文の長さと複雑さを体系的に考えた本。

当時のアメリカは空前のベビーブームで、児童書出版界には勢いがあった。
だから、優秀なスタッフとDr. Seussというスター作家を本気にさせ専従で打ち込んでもらう余裕もあったわけだ。

結果としてできたのが、『Hop on Pop』や、『The Cat in the Hat 』を始め大ヒット連打の本シリーズ。

「The Simplest Seuss for Youngest Use」と表紙にも書かれている『Hop on Pop』をわがスクールの新学期第1弾に選んだ。

書店のリードアラウドでは選んだことがないのは、本文が長いため。
普通の絵本が30数ページのところ、本書は64ページもある。
「全部を読みたい」という空気の書店でのイベントだが、開催は長くとも60分が子どもたちの限界だ。
64ページを全部読むのに、60分では無理。

ああ、1回で1冊を終えないでいいスクールがあってよかった!
このシリーズの醍醐味をみんなで味わえる。

何が凄いって、まだ今は、その凄さ・深さがだんだんわかってきた状態だ。
先週のクラスでの発見は、英語が初めてかそれに近い、英語非母語者の幼児にも読める鍵を秘めていること。

巻頭に「UP/PUP」。
これが、
UP
PUP
と書かれているのではなく、
ーUP
PUP
と「頭」をずらし、UP同士を揃えてある。

これで、「PUP」のなかに「UP」があるのが、視覚的にも約4歳以上にはわかる、ということがわかった。
「P」の音素を付けて、UPの発音を言えば、pupの発音に自然になる……。

その次のページからは、このUPを使って、
CUP
PUP
など語彙を加える。

PUP
CUP
と、順を入れ替えた「復習」が続く。

しかし、この語彙を機械的に示すだけではない。
CUP/PUPの下には、カップの中に入った子犬の絵、そして「Pup in cup」。
PUP/CUPの下には、カップがかぶさった子犬の絵、そして「Cup on pup」。
絵が可愛らしいだけでなく、「あれれ?」と思わせたり、愉快だと感じさせるユーモアがある。

このUPを知るだけで、英語を「よめちゃった」と思う幼児の心同様に、わたしも(この子たちよめちゃった)と、嬉しくなってしまった。

この本で、子どもも指導者たちも、気持ちがHop!

いやー、よく考えてあるのなんのって。
さすが、言語学者(オックスフォード大学院で博士号をとりそこなった、後に名誉博士号を獲得)Dr.Seuss。
こんなのは、序の口。
全ページ、そこら中に、楽しい語と文と語順が言語学に裏打ちされた考えに基づいて並んでいる。

子ども用として楽しんで読むのが、「表読み」だとしたら、言語学的に読む「裏読み」もあり、そんな研究レポートがたくさん見つかる。

指導者のひとりよがりではなく、子どもの人気も本当に高い本書。
これからも、子どもたちと読み込んでいこう。

(本シリーズ、一級の声優たちが読むCD付きがお勧め。さすが、お金がかかっています)

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