Blowin’ in the Wind
文 Bob Dylan, 絵 Jon J Muth 9780152325800, $17.95
レクサイル指数 なし
目安のレベル:初級
まず、作者名に注目!ボブ・ディラン。そう、今月71歳になる今も現役のsinger-songwriterの、あのディランだ。デビューした60年代には、彼の歌はprotest songsとして多くの歌手や人々に歌われ、公民権運動が盛り上がっていたアメリカの「時代の代弁者」とも評された。そんな1曲で、『風に吹かれて』として日本でもヒットした63年発表の歌が絵本になった。心洗われるような水彩画で名作絵本を生み出して来たイラストレーターが、子どもにも分かりやすい新たな解釈を示してくれる。ディラン自身が独特のしゃがれ声で歌うCD付なので、音読には欠かせない発音チェックが、贅沢にも「ご本家」の発音でできる豪華版。
詩は、読者を質問攻めにする。How many roads most a man walk down/Before you call him a man? 最初が、これだ。a manとしか言っていないにもかかわらず、60年代には多くの人が、これは公民権を認められていなかったアフリカ系アメリカ人のことだと思った。約半世紀後の絵本に描かれたのは、幼い男の子とその先に広がる広い草原。何本か道も見える。…そうか、a manとは「一人前の人」。「ひとは道を何本歩んで行けば一人前と呼んでくれるだろう」とも聞こえる。
How many times must the cannonballs fly/Before they’re forever banned?これと呼応しあうように、how many deaths will it take till he knows/That too many people have died?という問いがある。描かれたのは、どちらも子どもたちの平和な風景と大砲(cannon)だ。しかし後者の大砲には戦死者の棺のように、各国の国旗が掛かっている。「大砲を何発撃てば、二度と撃つことを禁じるの?」、「いったい何人死んだら、死者が出すぎたと気付くの?」いくつもあるこんな難しい問いに、ディランは「友よ、答えは blowin’(blowing) in the wind」と煙に巻いてきた。だが本書は、読者に答えのありかを描き示してくれた。各場面を注意深く見て行こう。子どものそばには、いつもあるものに気付く。風に吹かれている紙飛行機だ!答えは、どうやらその紙に書いてあるらしい……。
この歌を既に知っている大人にも、ぜひ手に取って欲しい。驚きがある1冊だ。
音読のヒント
1. CDを聞き、発音とフレージング(句切り方)を確認する
2. 押韻(man-sand-banned, friend-wind, sea-free-see, sky-cry-died)してある語を効果的に聞かせるために、韻を踏んだ句同士は間を開けすぎず続けて
3. 本の意図を汲み、「答えはきっとみつかるよ」という明るい雰囲気で