英語えほん千夜一夜~第2夜

9780763655983I Want My Hat Back
レベル:初級
 (文)Jon Klassen (絵)Jon Klassen
 (レクサイル指数)* 90L

赤いタイトル文字に断固とした目つきのクマ、セピアの色調、こんな印象的な表紙に惹かれて、「ジャケ買い」!それもありの本書である。話の運びは、童話の伝統、繰り返しを使っているが、ある衝撃的な非伝統的な展開を秘する。これまでありそうでなかった、クマのなくした帽子探しの物語。
 2011年に出版されて以来、英語圏の絵本界に、賞賛と笑いの渦を巻き起こした。Dr.スースにちなんだTheodor Seuss Geisel オナー賞受賞を始めとする各賞受賞と、NYタイムズのベストセラー・リスト連続登場など、大評判の1冊だ。
 My hat is gone./ I want it back. 冒頭の独白。……「我輩は猫である。名前はまだない」に匹敵する名調子だ。大切な帽子をなくして呆然としながらも、とても折り目正しい態度でクマは、キツネ、カエル……と尋ね歩く。
I haven’t seen your hat. /I have not seen any hats. /I haven’t seen anything all day. /What is a hat? 
など、それぞれの言い方で動物たちはみんな「知らない」と言う。簡単な文だがニュアンスがある。英語テキスト執筆者のいい手本になりそうだ。
 「あれ?だが待てよ」、一通り探しまわったクマは思う。「変にむきになった動物がいた」。
「Why are you asking me. …中略…I would not steal a hat. Don’t ask me any more questions.」
ウサギだった。でも、読者はとっくに気がついている。絵のなかのウサギは、しっかり赤いとんがり帽子をかぶっていたことを。その事実を思い出したクマは、衝撃と怒りで真っ赤になる。絵も真っ赤だ。文字はでかでかと
I HAVE SEEN MY HAT。
それまで、ゆったり流れていた時間が、ここからダッダッダッと高速に。
YOU. YOU STOLE MY HAT.
ウサギを糾弾するクマ。さあ、この後だ。絵本界に、大人に、そして多分、子どもにも一瞬衝撃を与え、でも直後に爆笑をもたらす展開が。……読んでのお楽しみ。
 全編を貫くクールでいて、茶目っ気溢れる文は、絵の印象そのものでもある。本書は、それまで児童書の挿絵などは描いていた作者が、初めて絵と文の両方を手がけた作品。個性が、絵本というぴったりの媒体を得て燦然と光る。

音読のヒント
1. クマの性格付けをする。性別、何歳位?また時期(冬眠前か開け?)などから、声や口調を決定
2. 他動物の声を工夫(速度、高低、抑揚など)。後ろめたいウサギは、速めの口調か
3. 全体の運びに変化(ゆっくり・冷静→速い・逆上→遅い・安堵)をつける

コメントを残す

CAPTCHA