今回は、マザーグース『Three Little Kitten』のPaul Galdoneのイラスト版が課題書。
目玉は、指導者自身の表現演習と、表現の指導法だった。
リードアラウドらしさのひとつでもある。
・英語を通じさせるには、表現が伴うことが大切。たとえ英語が稚拙でも表現力があると通じやすい。
・英語が腑に落ちるのと、的確な表現ができるようになるのは、ほぼ同時的である。
という、わたしの経験に基づく。
リードアラウドの指導者は、控え目だったり、ときには平坦だったりする日本人的な表現の殻を破らなければならない。
課題絵本に合わせて「表現の型」を作り、各論で学ぶ方法をとった時期もあった。
しかし、習得したように見えても、実は一過性で、すぐに自己流に戻ってしまうというジレンマがあった。
試行錯誤の結果、3、4年前から、総論的な「表現の心」から学ぶ方法にシフトした。
さらに、1、2年前からは総論と並行して、その「心」を課題書でどう具体的に使うかという各論もまぜている。
今回の『Three Little Kitten』では、子ネコ・母ネコ・ナレーターの三種のキャラクターを表現する必要がある。
絵本ではネコが擬人化され描かれているが、子ネコや母ネコらしい声やしぐさと、ネコの姿でemotionsを表す、といったシアターゲームをした。
meowとpurrだけでも、いくらでも表現はできる。
そのはずなのに、ただの「meow meow」では、子ネコだか大人ネコだかわからない、字に書いたものを読んだだけのような「meow meow」が方々から聞こえてきた。
大人という鎧、先生という鎧、もしかしたら女性としての鎧、日常、身にまとっているいろいろな鎧が邪魔をして、表現が凡庸でつまらない。
それでもこのような演習を5分、10分と続けて行くと、笑い声とともに、空気も和やかに、表現もときたま凡庸を突き抜けたものが出現してくるから面白い。
母ネコが4回ほど繰り返す「What?」という台詞を、声のpitchを変えることで違うニュアンスにする演習も興味深かった。
よく聞こえなくて「なんておっしゃったの」、子ネコが大切な手袋をなくしたことのを聞いて「なんてこと!」と叱責する、「ほんと?」と驚いた感じなど八つの違うニュアンスを、「what」一語に込める演習だ。
表したいニュアンスを、自分の口から出る言葉にピッタリ被せることも、巧みになりたいところだ。
ありがたいのは、指導者の表現力向上のためのこれらの演習は、そのほとんどが子どもの表現練習に応用できるところだ。
「ネコ語」の練習は、子どもたちが大よろこびだ。
遊びと思ってくれるが、実は、「m-e-o-w」「p-u-r-r」の読み方と発音の学習だ。
英語でのネコの鳴き声の練習だけでなく、子ネコたちが「meow」「purr」で喜びや悲しみを伝える場面で意味をとらえてfluentな読み方をする練習になる。
「What?」も、ニュアンスを変えて何度も練習するうちに、子どもも言い慣れていつの間にか自身の語彙になる。
この日、大きく笑い過ぎて、柱に頭をぶつけ「ゴーン」という音を教室に響かせた人が二名。
楽しく学べた、と言えるかな?