あるシンガー/アーティストに惚れ込んで、ここしばらくその彼のCDを、リードアラウドで鍛えた(?)耳で聞き込んでいて発見した。
一節の終わりというか、一息で歌った節の最後の語の
[s] [z] [ʃ] [ʒ]
の音が、やけにきれいで、耳に残るというか、胸を打つ。
たまたまの癖なのか。
彼の音楽に凝ったついでに、評伝も読んでいたら、あった、あった!
シンガーとして、息継ぎは決して録音で残さないように徹底させ、反対にsibilantを綺麗に入れることには大変なこだわりがあったという記述が。
そうだ、息継ぎがまったく聞こえないのも、これで納得。これも歌を洗練させている。
彼の歌で、彼がこだわった印象的に残る音のことを、sibilant(歯擦音)
と呼ぶ。
これは、不勉強ながら初耳だった。
ああでも、その音の澄んだ感じ、真心のような空気と言ったら…。魅了されてしまう。
一般的に、sibilantをどう作るかといえば
「舌を使って狭めを作ることによって速い気流を生じさせ、その気流を歯の裏などに当てることによって強い噪音を発するもの」
と、こうwikiには書いてある。
こう言われると、口のなかで舌がもつれそうで、とうてい再現不可能のような気がしてくるが、まあ [s] [z] [ʃ] [ʒ]を作るときの歯と舌の作る音だ、といわれれば、似た音は出せる。
ぜひスローな曲で、sibilantのお手本を聞いてみて。
この技術は、朗読でも生かせるものなんだろうか。
ちなみに、このシンガー(Scott Walker)が、もう一声をデュエットでかぶせるときには、sibilantを発音するのはリードだけ。声がキーンと綺麗に聞こえるように、ダブらせていないようだ。
プロの仕事、本当に尊敬する。