子どもと「空耳英語」~soundsに興味を持ったときに文字を教えたい

日本人なら、ときに英語が日本語の句に聞こえる、「空耳英語」を経験することがあるだろう。

たとえば、
Ah, hold me tight.が、
「アホみたい」

Wash your hands.が、
「わしゃ、変」、のように。

わたしが自分の経験でよく覚えているのは、Led Zeppelinの曲、謎の「ホラホララブ」。
「ほらほら、ラブ」って言われても…?

歌詞カードをみたら、Whole Lotta Love(Whole lot of Love)だった。

小学生で英語劇や英語の歌、英語キャンプを経験した子が、文の一節や一句をこういう「空耳英語」的にそらんじて、意味をわたしに尋ねてくることがある。

そういうとき、かなり気になっているわけで、たとえば「わしゃ、変」と聞こえる英語なら、
Wash your handsと、書いてみせてやる。

リードアラウドをやっている生徒たちは英語の語句(print)が読めるので、「ああ、なーんだ」と大笑いになる。

そのときに、print(文字)とsoundが、しっかりと結びつき、強く記憶に残る。

ペアで1セットの役に立つ記憶になるところを、「わしゃ、変」という「空耳」のまま脳内を漂よわせていては、まったくもったいない。

音に興味をもったときに、文字を教えたい。

英語で歌えるが、歌詞は読めない子も、よく見かける。
おそらく頭のなかは、「空耳英語」や「じゅもん」が漂っている。
歌は、英語の文字と結びつけてあげないと、英語力とほとんど結びつかない。

せっかくだから、英語の歌も、文字を指差しながら、つまりprintとsoundをセットにして記憶させたいものだ。

こんな「空耳英語」現象をみるにつけ、英語絵本で語句を指差しながら、print-soundをマッチさせて読ませる、リードアラウドは英語力をつけるのに有効だなと思う。

頑張った!夏の集中英語クラス生〜キッズブックス英語スクール

今夏、リードアラウドで英語力を育てた生徒ふたり(小中クラス)の集中英語クラスを受け持った。
もちろん絵本がメイン教材。
The Day the Crayons Quit

絵本とは言え、英文が多い!
ネイティブなら、2~3年生の英語力、内容は高学年も楽しめる上質のユーモア絵本。

主人公の少年のクレヨンたちが、いろいろ少年に言いたいことがあって、ストライキ寸前。
それぞれが苦情を手紙にしたためる。
各ページが、各色のクレヨンで手書きされた手紙、という趣向。

さすが絵本を5年以上リードアラウドしてきたふたりだ。
ひとことも「ウワー無理!」とか、「英語だらけ〜」などという声は挙がらない。
すっと本に目がいくのは、喜ばしい。

さて、この絵本の他にあと1冊、『SpectrumーLanguage Arts G2』というアメリカの文法のワークブック2年生用を使った。

学んだこと。
進度が速かったので、ここに少々メモしておく。

●文法、読解…

nouns(名詞):複数形、規則的なものと不規則的なもの
pronouns(代名詞):I とme。 I + 動詞、 動詞+ me 、動詞の前にくるか後か程度の認識。
これまで見てきた文例の、文法的理解入門。

比較級と最上級:tall-taller-tallestなど、文に合わせて変化させる。
意味の他、-er形は、thanと使われることが多い、という程度の認識。

同義語と反対語:
これまで使ってきた語彙を、これらのカテゴリーで整理。
little、small、tiny がほぼ同じことを意味することなどを認識。
「なんでsmallをlittleって言ったりするの?」といった質問はよくされる。
日本語でも、「小」といったり「ちいさい」といったり「小型」といったりすることを言うと、納得。

疑問文:
What, where, when, which, who, whyで、本文の内容について質問したり、質問にこたえたりした。
Does/Do の疑問文との違いなども。
絵本の内容解釈は、ほぼすべて疑問文と、それへの答えで進めた。
What does he/she/Duncun(主人公名)〜など。

●語彙、writing…
Flash cards(単語帳)に、意味と例文を書かせたので、今後も活用させたい。
読めるか、意味がわかるか、文が作れるか。
チェック点は3点。

Writingは、Journal(日記)で。
書きたいことを尊重して、それを助ける形で書かせた。
直しを入れた文を、清書すると少し長く記憶される。
断片的で文になっていなくても、家庭でも継続して書かせたい。
「だれが」「どうした」というA → B を基本に。
時制などはおおめに見る。

即興のスリルを楽しむ〜楽しい先生になる「シアターゲーム・ワークショップ」

「インプロ(improvisation)」という演劇スクール発祥の訓練がある。
またの名を「シアターゲーム」という。
近年、教育現場でも取り入れられている。

シアターゲームで培われるもののひとつに即興力がある。
即興力が欠けた人との会話はつまらない。
普段の会話は、退屈だとしても当事者同士の問題ですむ。
しかし、教室で先生の会話(=授業)が退屈なのは大きな問題だ。
生徒の脳が刺激されず、学習効果が落ちる。
生徒にやる気が出ないので、動機付けができない。

楽しい受け答えは、みんなできないことはないが、たいていすぐに出て来ない。
「warm-up」「ice-breaker」と呼ばれるシアターゲームは、発想が湧き出るのをせき止めている自意識や、人見知りをする感情を溶かす。
楽しい発想が表出する回路のようなものを作る助けになる。
この回路はしばらく使わないとすぐに塞がれがちなので、本番前にすると効果的だ。

「warm-up」の一種に「energize games」がある。
例えば、「Dinosaur, roar!」という文句を急に読んでも、あまり力がでなかったり、力の出し具合がこじんまりしたりする。
こういうときに、エネルギーを適した大きさで瞬時に出せるようにするゲームだ。
先生がこういったエネルギーをコントロールできれば、表現がはっきりして幅が大きくなり、生徒にとって「面白い」という印象になるだろう。

集中ゲーム「concentration games」はエネルギーの一種、吸収の力を養う。
生徒の声をどんどん拾えたり、生徒の言わんとすることが即座にわかるようになる。
生徒の集中も自然に促され、結果的にコミュニケーションが滑らかになる。
自分の声を拾ってもらえれば、生徒はもっと発言したくなり、双方向的に活発なクラスとなる。

エネルギーがでたら、今度は質的な訓練をするゲーム「Emotion games」を紹介しよう。
日本人、特に若い人は平坦な話し方をしがちだ。
感情の起伏が見えないというか、決まったパターンだったり、自分の心を反映していなかったりする話し方が多い。
習い性となっていて、感情を押さえているという感覚もない。
英語圏の表現を前提に書かれている英文を読むとき、日本人の普段の感情の幅で読むと伝わらない場合がある。
「emotion games」は、日本人には特に重要なゲームと言える。
「emotion games」をしていると、心が軽くなる副作用もある。

こういったゲームの先に、「scene games」(与えられた場で、アドリブの台詞や人物造型をする)や、「characterization games」(いろいろな人物を即興で造型する)がある。

ゲームでのとっさの反応が、「生徒にわかりやすい」「ユーモアが感じられる」ようになってくると、今度は即興のスリルが「病みつき」になる。そうすると授業を行うことが楽しくなってくる。リードアラウドなら、リードアラウドの「ライブ」が楽しくなってくる。
生徒たちの先生への印象も、「楽しい先生」になってくる。

この秋(10月11日)の「シアターゲーム・ワークショップ」では、上記のゲームを、まずは先生方に体験して、効果を実感していただく。
その上で、自身の英語教室のアクティビティとして使うヒントにしていただく。
こんなふうに、一石二鳥を狙ってご参加いただけたらと思う。

英語指導者のためのシアターゲーム・ワークショップ

効果的なreading 指導~21世紀はbrain scienceから考える

21世紀は語学も科学的に学ぶ時代だ。
いつまでも、「カリスマ」の、いわば個人的な方法に振り回されたくない。

「Scientific Learning」という専門誌に掲載された「Brain Science and Reading Instruction」(Rasinski, Timothy Ph.D.& Burns, Martha S. Ph. D, 2014)という論文を読んだ。

そこに挙げられている、「効果的なreading指導」に欠かせない指導の5要素は、これらだ。

1. Phonological and phonemic awareness
発音を聞き分ける、正しく発音する力

2. Phonics or word recognition
フォニックス、または単語の認知力

3. Fluency
文意の解釈を踏まえた適切な表現を伴って、文を滑らかに読む力

4. Vocabulary
語彙力

5. Comprehension
読解力

これらが、教育界での共通認識となっているのと同時に、
脳の可塑性(やわらかさ)が、
幼児期だけでなく、適切な刺激で長く続くということも、分かっている。

さて、どのような「適切な刺激」があるか。

意識的(intenional)、集中的(intense)に焦点を定める。
同時に、反復する。

特に、リードアラウドでも強調している 3. Fluency、これを刺激するのに、こんな具体的な方法が効果的と報告された。

指導者がテキストをfluentに読む。それを聞いた後から、生徒が、繰り返し読むこと。
また、すぐにその場で、知らない語、読み方などを直してもらうこと。

反復と手助け(repeated and supported practice)が、fluent readerに育つ決め手。

ーこれって、Sounds familiar(聞いたことがある話では)?
そう、リードアラウドがやっていることでした…。

preposterousを使える子ども~よい絵本をリードアラウドする

『Art and Max』という絵本がある。
Art & Max (Art and Max)
5-9歳位の子どもたちと、何度かリードアラウドをして好評だった。
本年度のワークショップの課題書でもある。

緻密な水彩画で定評のある、絵本の「芥川賞」を複数回受賞した作者の作。
絵ももちろんほれぼれする素晴らしさだが、本文も愉快だ。

ちょっと先輩ぶって芸術家気取りのトカゲと、後輩で芸術は駆け出し、おっちょこちょいのトカゲの会話で物語が進行する。

途中で、後輩の軽々しい行動に、先輩が業を煮やし、
「Preposterous!」と叫ぶ。
発音は、pri-pos-ter-uh s(プリスチュラス)。

こういう難しい語彙を、big word と呼ぶが、普通の子どもの本だったらせいぜい
ridiculous
とか foolish
を使うところ。

だが、ここは相手が、芸術家気取りで先輩ぶっている。
その人となりを表すのに、preposterous を使う必然性がある。

こういうところが、「よい絵本」のよいところ。
文脈、文学的必然性が、語彙を決める。
教材的リーダーなどの、主に教材会社が作る読本と一線を引くところだ。

教材は、本文に使う語彙にレベルを設けて、そのレベルに収まる語だけで文を練る。
使う語彙、レベルの必須語彙が先にありき、だ。
文学性、文脈は後回し。
すると、とたんに文がつまらなくなる。
本から「本気度」が失せてしまうのだ。

子どもでもちょっと背伸びした子は使う、preposterousだが、先日は偶然にも、この語に関して面白いものいいをするアメリカ人に会った。

「その人の英語がどれほどかは、たとえばpreposterousを使うかどうかで分かったりするよね」と言うのだ。

この語が、英語使い手の語彙のあるなしを示す一種の指標のようなものになっているらしい。

こんな、通常の日本の中学や高校の英語程度では習わない洗練された語彙、preposterousが、さらりと使われている絵本も凄いが、普通にそれをリードアラウドしてしまう子どもたち。

ちょっと凄くないか。