preposterousを使える子ども~よい絵本をリードアラウドする

『Art and Max』という絵本がある。
Art & Max (Art and Max)
5-9歳位の子どもたちと、何度かリードアラウドをして好評だった。
本年度のワークショップの課題書でもある。

緻密な水彩画で定評のある、絵本の「芥川賞」を複数回受賞した作者の作。
絵ももちろんほれぼれする素晴らしさだが、本文も愉快だ。

ちょっと先輩ぶって芸術家気取りのトカゲと、後輩で芸術は駆け出し、おっちょこちょいのトカゲの会話で物語が進行する。

途中で、後輩の軽々しい行動に、先輩が業を煮やし、
「Preposterous!」と叫ぶ。
発音は、pri-pos-ter-uh s(プリスチュラス)。

こういう難しい語彙を、big word と呼ぶが、普通の子どもの本だったらせいぜい
ridiculous
とか foolish
を使うところ。

だが、ここは相手が、芸術家気取りで先輩ぶっている。
その人となりを表すのに、preposterous を使う必然性がある。

こういうところが、「よい絵本」のよいところ。
文脈、文学的必然性が、語彙を決める。
教材的リーダーなどの、主に教材会社が作る読本と一線を引くところだ。

教材は、本文に使う語彙にレベルを設けて、そのレベルに収まる語だけで文を練る。
使う語彙、レベルの必須語彙が先にありき、だ。
文学性、文脈は後回し。
すると、とたんに文がつまらなくなる。
本から「本気度」が失せてしまうのだ。

子どもでもちょっと背伸びした子は使う、preposterousだが、先日は偶然にも、この語に関して面白いものいいをするアメリカ人に会った。

「その人の英語がどれほどかは、たとえばpreposterousを使うかどうかで分かったりするよね」と言うのだ。

この語が、英語使い手の語彙のあるなしを示す一種の指標のようなものになっているらしい。

こんな、通常の日本の中学や高校の英語程度では習わない洗練された語彙、preposterousが、さらりと使われている絵本も凄いが、普通にそれをリードアラウドしてしまう子どもたち。

ちょっと凄くないか。

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