英語絵本のリードアラウドを始めた頃、
英語を読むのだから「ネイティブのほうがやっぱり上手なはず」
とよく言われた。
そうではないのだ、と反論するのに引き合いに出したのが、
日本人による日本語の本の朗読やいわゆる読み聞かせで、
「日本人ならだれでも上手ですか」
と尋ねたものだ。
すると答えは決まって、
「いやいや、そんなことはない」という。
「でしょう?だから、英語の本も同じ。ネイティブにも上手い、下手がありますよ」
と言って、非ネイティブの、また非ネイティブならではの、英語絵本の表現、聞かせ方を磨いてきた。
そして、母語である日本語のことはいつも気にはしながらも、その読み方にはいっさいタッチしてこなかった。
日本語の絵本だったら、いったいどう「リードアラウド」する?
同じ本が、英語で表現できるなら、日本語でもできるのか?
自分の不勉強は棚に上げ、ほうぼうから聞こえてくる日本語での読み聞かせや、朗読の多くには、違和感を持った。
その違和感を説明できずに、いつももやもやしていたところ、渡辺知明さんの「表現よみ」と遭遇した。
もう10年以上まえになる。
すっと腑に落ちた。
渡辺さんが、巷の日本語の声による表現、ときにTVショッピングの司会者の声にまでコメントしていて、興奮した。まったく、共感する内容だったのだ。
しかしそれから、わたしの怠惰のせいで、つい最近まで渡辺さんの書かれたもののそばを、ふらふらしていた。
それがやっと、このたび、ご一緒させていただくことになった!
ブックハウスカフェでコラボ、
英語の声&日本語の声:声で表現する絵本ワークショップ
開催だ。
課題書は、『The Giving Tree』と『おおきな木』。それぞれ、大島と渡辺さんが担当する。
まずは、わくわく。
渡辺さんはどう読むのだろう。
そしてじわじわと、ことの重大さがわかり始めて、恐れが湧いてきている……。
●渡辺知明さんの『ごんぎつね』
巷の朗読によく感じる自己陶酔感のようなものを排除した、この童話に即した架空の読み手としての読み。そこに違和感のない、造型された生きた個性を感じるとともに、聞き手への温かい「聞かせたいこころ」のようなものが流れてくる。