今回の課題書は、珍しく原書が日本語の本。訳者の原書に対する敬意や熱意のようなものや、日本語のニュアンスを英語に置き換える際に必要な両方の言語に通じる知性や心に動かされた。
しょっぱなに、みなさんの感想を尋ねると、難しいと感じた人が多いことに納得。その理由が「ナレーターが誰か」なのは、さすが。玄人?
キャンプ場でお父さんが子どもに語っている姿が見える。なぜかお父さん。そのうち、理由が浮かんでくるかもしれないが、いまは直感的。
いろいろな分析があった。日本語版と英語版の絵の扱いの違いも興味深い。風景がクローズアップされ、語り口が子どもっぽいのが日本語。風景が一歩退いていて、口調がsophistigateされて大人っぽいのが英語。ここにも議論の種が。
種を撒きながら、朗読表現の練習に進む。文字で書かれている文章に音を感じさせるのも、リードアラウドだ。音が鳴る「ボタン」が、あちらこちらに埋まっている。それを拾いながら、音を聞くような気持ちにさせる読み方を目指す。擬声語の読み方だけではなく、読み手が耳を澄ますような間からも、音は感じられる。たとえば、birdsがねぐらとしている木に戻る景色。そこからは、賑やかな鳥の声が聞こえてくるはずだ。光は主人公のひとり。これを感じさせるのは、遠近や明暗の表現だろう。夜空の星を見るときの声と、目を雫に近づけて見るときの声は違う。どう差をつけるのか。子どもに聞かせている場面でもある。「There you are, white moon!」なんて、ナレーターが親密に感じられるところだ。声や読み方も、聞き手に近づきたい。
カルチャーセンターなどであれば、こういった演習を何度も行うので、仕上がりまで見届けられる。だが本講座はプロ向け。多くは、本人の練習に任す形になる。次回のプレゼンに期待する。