「使える英語」を遠ざけている教育界の、そして日本人の意識とは〜 吉田 研作さん( 言語教育研究センター教授)インタビューから

「『英語はネイティブのように』の誤解」、と題された

吉田 研作 言語教育研究センター教授 のインタビュー
http://www.yomiuri.co.jp/adv/sophia/sophian/sophi_08.html
から、一部転載します。
●●●  以下転載

(前略)

「英語はネイティブのように」の誤解

 もちろん、英語教育について目に見えて変わっている点もあります。たとえば、小学校高学年への「外国語活動」の導入。現在、その開始を3年生に前倒しし、5年生からは英語を正規教科にするという早期化案が検討されています。

 これに対し、母国語の能力が固まらないうちに外国語を教えることを疑問視する声もあります。しかし、かつての僕のように、周りがすべて英語という環境に置かれるのならともかく、せいぜい週に数時間という「英語環境」が、日本語の修得に悪影響を及ぼすとは考えにくいでしょう。

 では反対に、そんなわずかな英語学習に効果があるのか。小学校の段階で重視すべきは、他の教科同様、知識より体験です。英語がわかった、通じたという体験の積み重ねが、学びへの動機づけにつながるのです。実際、小学校で英語を学んだ子供のほうが、海外や外国語に対して前向きな意識が強いという調査結果がいくつもあります。むしろ怖いのは、親が「勉強」させ過ぎて、子供を英語嫌いにしてしまうことかもしれません。

 英語を話せない自分に教えられるのかと、不安を感じる小学校の先生も多いでしょう。もちろん一定の訓練は必要だと思いますが、加えて、こんな研究結果もあります。

 一般に教科書などに付属する音声教材は、ネイティブスピーカーが録音しています。これに対して、あえてノンネイティブの録音教材を使って高校で授業を行なったところ、生徒たちは日本人として英語をしゃべることに自信を持つようになり、英語によるコミュニケーションの量も増えた、というのです。

 これはある上智卒業生の博士論文なのですが、僕が常々主張している「インターナショナル・イングリッシュ」、すなわちネイティブの英語とは別の、「国際共通語としての英語」の重要性を実証してくれる研究ともなっています。

 国際社会で話されている英語のうち、3分の2は「英語のノンネイティブ・スピーカー」によるもので、発音も文法も、実はネイティブのものとは違います。それでも互いに理解でき、話し合いや交渉は問題なく行なわれている。日本人には、英語はネイティブのように話せなくてはいけないという固定観念が強いのですが、それを捨てる必要があるのです。

 まず小学校の先生が自信を持って英語を教え、英語を話すことが好きな子供が増えていけば、中学・高校の英語教育も変わっていくことでしょう。課題はたくさんありますが、我が国の英語教育がよい方向に向かいつつあることも事実のようです。

●●●以上 転載

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