歌舞伎で思う「声は基本」〜リードアラウド研究会

趣味と実益を兼ねて(兼ねているかな?)中村吉右衛門一周忌ご追善公演(13回目秀山祭)を歌舞伎座で鑑賞した。
 
出し物は、「仮名手本忠臣蔵」の祇園一力茶屋の幕。
 
47人の元家来たちと主人の仇を取ることを秘密裏に企てている大星由良助は、周囲に悟られないようにお茶屋で遊び呆けているフリ。この役を仁左衛門。
 
そこに仇討ちに参加したい、足軽の平右衛門が登場する。これを海老蔵が演じる。
 
う〜む、わたしが海老蔵だったら、演じながら悩むなあ。
 
声が通らないのである。
声帯が開放されていないように聞こえる。
 
へんに噛み殺してしまう癖、どうしたら直る?
奥歯を噛んで口を後ろに引きすぎか。
ときどき、やけのような大声でがなる感じだ。
 
中堅の役者、それも大名跡を継ぐという恵まれた「生まれ」の役者なのにだ。
 
よけい辛いな。
 
声への不満だけでなく、演技があざとい感じで、途中で食傷気味になる。
足軽らしさを演じてはいるのだが、飽きが来る。
 
リードアラウドでときどき注意する、「クサさ」と共通するかな。
 
役者としての脚本の理解が、表面的なのかもしれない。
周囲には、素晴らしい先生、先輩役者がいっぱいいる(いた)のになあ。
 
ただし、顔は凄くメリハリがある。
(好きではないけれど)舞台映えするよくできた顔だ。
これも歌舞伎の「才能」だけれど。
 
声も演技も、自分で直す気にならなきゃ直らないだろう。
せっかくの「生まれ」と「才能」なのだから、頑張って欲しい。
 
さて、今回のこの演目の主人公は、大御所、仁左衛門。
 
お年は70歳すぎているのに、声がツーン、カーンと通り、心くすぐるニュアンスが、そしてメリハリがある。
 
台詞を聞いていても、飽きがこない。
嘘と誠の内容が、くっきりわかる。
 
愛嬌もあり、47人が仇討ちについていくリーダーシップにも、説得力がある。
 
おまけに、どんな角度で見ても姿形がよく、ミーハー的にも惚れ惚れする。
 
 
ああ、これが人間国宝!
その声、姿、台詞、鍛錬しているのだろうなあ。

『Where the Wild Things Are』はリードアラウドの定番、今年もオンライン講座で〜絵本リードアラウド認定講師講座

 

Maurice Sendakが本書『Where the Wild Things Are』を世に出したのが、1963年。

ちょうど20世紀が半分余り過ぎたころだ。

 

それ以前の絵本、それは民話だったりおとぎ話だったりで、おおよそは大人の世界からみて都合のよい子どもにするための躾(しつけ)を主目的としていて、そのような絵本を見慣れた目には、さぞかし驚きだったに違いない。

 

何に驚くか。

だいいちに、主人公が「悪い子」だということ。

夕食前の忙しい時に、いたずらをするは、お母さんに酷い口答えはするは、癇癪を起こすはで、ついに夕食抜きで自室にこもる。

でもそんな子に本書は、これまでの本のように「子どもはそうであってはいけない」というメッセージを込めてはいない。

「こんなこともあるよね」と、主人公みたいな(実は珍しくない)子どもたちの側に立って、空想の世界を作りそこで自由に遊ばせて、自分で物事を見極め決断することを許してくれる。

 

読んでいる子どもがほくそ笑んだり、時には我が事のように照れたりもする、これまでどの大人もかかなかった、子ども自身の世界の一端が描かれている。

 

本書が出版された当時、子どもに悪影響を与えるからと、いくつもの図書館で「禁書」になった。

それにもかかわらず、世間では大きな話題と人気になり、その年の米国絵本の最高栄誉、コルディコット大賞を受賞した。

 

心理学者たち(特にユング派)は本書に、

子どもの恐れ、怒り、愛などの「潜在意識」や「無意識」が描かれていて、

子どもがこれを読むことで自分の感情を客観的にみて、処理する助けになるだろう、

などと絶賛し、多くの論考も続いた。

 

「20世紀の絵本の金字塔」ともいわれ、数々の機関の選ぶ「絵本名作100選」のようなリストには必ずその名がある絵本である。

 

たとえ英語がまだあまり読めずとも、迫力と愛嬌のある絵とダイナミックな構図にまず子ども心は惹かれる。

 

その魅力を生かし、また最低でも「ぶち壊さない」ように、子どもに読むにはどうしたらいいか。

ひとりでも多くの大人にそれを考えてもらい、練習をつんで、子どもに読んでやったり、一緒に読んで楽しんでもらいたい。

 

 

リードアラウドをするものとして、はずせない一冊だ。

ということで、今夏も「絵本リードアラウド認定講師講座オンライン」の課題書になっている。

 

『The Gruffalo』で英語読書、リードアラウドに誘う〜絵本リードアラウド認定講師講座

2022年度第3回目の『絵本リードアラウド認定講師講座 2022』の課題書は、英語圏で絶大な人気の絵本『The Gruffalo』だった。

Gruffalo?

Yes, Gruffalo.

みなさんには馴染みが薄いかもしれないが、英語絵本の中では「子ども支持率が高い系」だ。

お父さんお母さんが選ぶメルヘンチック(「お花畑系」?)な本が物足りなくなる、5歳から小学生低学年あたりの活発な子どもの興味を大いに引いてくれる。

英語教師には、ちょっとした救世主的な一冊。

認定講師講座に集まった先生たちが、これに挑戦した。

故事成語「虎の威を借る狐」を基に、虎をGruffalo、狐をmouseに据えた物語だ。

mouseを世渡り上手な利口者と肯定的に捉えるのも、権力者の力を頼みに威張る小者と否定的に捉えるのも自由。

しかし……この日の参加者によるmouseは、なんにせよキャラクターが薄い!

いったい何者なのか!

登場人物の肉付けが「薄い」のには、パターンがみられた。

  1. 型で演じている(自身の考えるのステレオタイプのひとつに当てはめているだけで、登場人物としての肉付けがされていない)。ベテラン先生に多い。聞き手に、よくある型と認識され、すぐに飽きる。興味が湧かず、長続きしない。
  2. 声色を使っているだけ(声を変えただけで表現がない)。「変声」で子どもの注意を引いても、表現が伴わなければ、すぐに飽きられる。
  3. 違和感(声や口調からにじむキャラクターが、物語と合っていない感じ)ありあり。深く読解していないのかもしれない。子どもたちの読解を混乱させる。
  4. 掘り下げ、強調、練習が足りない(方向性はよい)。

さあて、みなさん。自分はどうだったか。当てはまるパターンはないか。録音を聞いてみること。

次回のプレゼンテーションを楽しみにしている。

参考映像:

絵本リードアラウド認定講師講座 2022
The Gruffalo

絵本リードアラウド、聞く気にさせる心構え: その1.enthusiasm〜認定講師講座2022年第1回

『絵本リードアラウド認定講師講座』の2022年度が始まった。気持ちを新たに、違った切り口からも、英語絵本のリードアラウドそしてReadingのAdvocate(提唱)をしていきたい。

先日の講座でも挙げたが、子どもに英語絵本の朗読を聞く気にさせる、わたしたち読み手の心構えがある。

心構えその1「enthusiasm」

「聞いて聞いて!」「この本の話は面白いから」という読み手(わたしたち)の心の躍動や熱のようなものを持つこと。この重要性をはっきりと意識したのは、ある経験が続いたときだった。

初めてリードアラウドする本があると、参考にするため、YouTubeで主に英語圏の人たちのread aloudを聞いてみる。作者自身の朗読が見つかった場合は、最後までちゃんと聞くことにしている。朗読自体の上手い下手は別にして、作者が意図した意味を読み方から推測できることが多いからだ。

問題は作者以外の人々の朗読だ。第一声で、「これ以上は聞きたくない」と再生を止めてしまうことがある。次の人はどうだろう。「もういい」と止める。次も、次も、次も……。運がよければ、「いいなあ」と感じるものを見つけられるという状態だ。これはどういうことなのだろう? わたしの耳に問題があるのか。耳が肥えすぎた? いやいや、そうではないだろう。なにかが足りないのだ。こんな朗読を子どもに聞かせたら、行儀のいい子以外は席を離れてしまうだろう。なにが足りない?

そして、はっと気づいた。「enthusiasm」じゃない? 読み手が、本の面白さや楽しさを伝えたいと思っていない。それどころか、面白いとも楽しいとも思っていないのかもしれない。面白さや楽しさが、全然表現されていない。「聞いて聞いて!」「この本の話は面白いから」という熱意、ほかの人を呼び込む「enthusiasm」がない。

では、これから読もうとする本に対して、enthusiasmを持つにはどうすればいいか。こう考えた。

  1. 選書を吟味する:面白いと思えそうな本を探すか、教えを乞う
  2. 読解する:自分でだけでなく、プロの解説を読んだり聞いたりする
  3. 好きなところや面白いと思うところを探す

リードアラウド指導者は、自分自身のenthusiasmをギラギラにして、親や大人がこの三点をクリアし、enthusiasmを持って子どもに朗読できるよう導きたい。

A Parade of Elephants

「声に出して読む英語絵本」でどんどん朗読がうまくなる話〜リードアラウド研究会

朝日カルチャーセンター(現在オンライン)で開講中の『声に出して読む英語絵本』で、『King Bidgood’s in the Bathtub』という中世の宮廷を舞台にしたユニークな絵本のリードアラウドのレッスン(全6回で2冊仕上げる)をしている。先日3回目が終わったところ。

 

今回は、受講生にまっさらの新人がいて、その彼女がみるみる上達するので、講師にも他のベテラン受講生にも、たいへん刺激的だった。

 

新人といっても誰もが、たった3回のレッスンで上達するわけではない。

このたびの新人の、上達の要因として考えられるのは、こんなところか。

 

・始めから講師を信頼して、習ったことをすぐに実践する

・次回のレッスンまでしっかり練習する

・先輩受講生の読みをよく聞く

など。

 

このような人のリードアラウドは、どこから変わっていくのか。

 

変化が現れる順は人によって違うが、彼女の場合は、ざっと以下のように変わってきた。

  1. 声…「姿勢から変える」と講師がいったら、すぐに実践して声が子どもに近づいた。また「あくび卵発声」では、恥ずかしがらずに練習した。もともといい声だが、ぴんぴんに張りのある子どもの役柄の声に変化した。

 2. 台詞とナレーションの分離…「声の強弱、大小や、高低、緩急を駆使して分離する」と習ったところ、次回にそれを仕上げてきた。それには練習が欠かせない。

   3. キャラクターの造形…「登場人物のキャラクターを考え、その人らしく台詞を言う」と習ったら、3回目のレッスンまでによく絵を観察したらしく、かなりのニュアンスを醸しだした。

 4. 傾聴と発言…講評をお互いにしあう場面で、物怖じせず、ベテランの受講生に的確な指摘をして、そのベテランに感謝されるほどだった。

 

などなど。

こんな新人が入ると、もともと熱心なベテランたちもさらにやる気になって、「これでどうだ!」という、落とし所をつくったり、新解釈でニュアンスをだしたり、たいへんな熱を感じ、講師もずいぶんとやりがいを感じる。

 

彼らの学びは、もしかしたら、認定講師顔負けかも?

刺激をもらうと言う意味で、こんな講座を、認定講師もときには覗いて欲しい。

 

【朝日カルチャーセンター オンライン「声に出して読む英語絵本」】

:現行の夏講座はあと3回、課題書はもう一冊『I Want My Hat Back』。

『King Bidgood’s in the Bathtub』は引き続き、通し読みは続く。