アメリカの西海岸、オレゴン州のポートランドという街にくると、特に東京からひとっ飛びで着いた直後の数日間は、その街に住まう人々がずいぶんと自由に、自己表現して生きているなあ、と感じいって、人観察できょろきょろしてしまう。
早春のある春めいた日、春の訪れを知らせる妖精のようにウキウキ、ふわふわと、お兄さんが頭からつま先まで虹色のオウムに扮して歩いていた。すれ違う人々もごく普通に、それを笑顔で見送る。
交差点で、あごひげを密にたくわえたお兄さん?が人待ち顔で立っていた。 その見事なヒゲは、顎下10センチくらいのところで圧縮フェルト加工のように隙間なく密になっている。色も赤から茶色のグラデーションに染めていて、スタイリッシュだ。
色といえば、東京も渋谷などでは見かける蛍光色の髪。この街では、もともとの髪の色がブロンドだったり、色があっても薄く抜きやすい人が多いからか、蛍光色を乗せると、とてもいい発色で光り輝く。草間彌生さんの髪のような鮮やかな色の老若男女が、あちこちに。
自由な雰囲気は、見かけだけではない。
舞台俳優のように響き渡る声で、滔々(とうとう)と世の中への不満を、通行人に疲れ知らずに語る男性や女性。毎日、声を出しているのか、素晴らしい声だ。
別の角を曲がると、スタジオでの練習の代わりか、小遣い稼ぎか、アンプ持ち込みでロックギターをかき鳴らしているお兄さんがいる。かなりの腕前で、立ち止まって聞き入る人も。
スターバックスにいけば、まるでGilda Radnerが演じる、おしゃべりで超元気なおばあさんを地でいくスーパーハイパーおばあさんが、天候への不満を周囲に語りながら、コーヒーにどぼどぼ牛乳を注いでいる。
即興劇をする人だったら、キャラクターつくりのアイディアに事欠かない街だが、個々を重んじている感じの周囲の人々が、とても暖かい目をしているところが羨ましい。
わたしにも、まったく嫌な風景ではない。風通しがいい、という感じ。
気持ちがゆったり大らかになる。
ふと想像するのは、こんなに自由に振る舞い、それをまた当たり前に受け入れる人々が小学生だった頃の教室。
賑やかだっただろう。でも先生は、そこで子どもをじっと行儀よく椅子に座らせておくことに、主なエネルギーを使ったわけではなさそうだ。
他者を尊重し受け入れること、そうすることが自分の自由にも繋がるということ、子どもはどう学んだのだろう。
小さいながらも、そして週に1回程度の英語の教室であっても、風通しのいいところにしたい。
そう、ちょっと見は統制がとれてないようでも、子どもが開放的に、でも確実に学べるところであって欲しい。