カルチャーセンターで一般向けに、英語絵本の朗読クラス(「声に出して読む英語絵本」)を担当している。
英語で朗読、なんて考えていなかった人たち。でもなんだか、やってみたいと頭の隅で思っていた人たち。そして、ちょっと英語には自信がある人たちである。
そんな人たちが、初回に英語絵本を読むと、だいたい2つの型のどちらかになる。
型1. 中高の英語の授業なら、「上手」と言われる、字面は一字一句がほぼ正確、だが表現と言えるものはなく、ただ読みあげたもの。文の意味や場面が浮かばない、つまり物語が見えないもの
型2. さまざまなクセのある、一聞「表現ある」読み方。抑揚だったりリズムは、本の内容を考えた表現ではなく、自分のクセだったり型だったりする。本自体の中身が伝わらない
この2つ、違って聞こえるが、実は同根。
どちらにも、文や本全体の意味や感情が、読み上げる言葉に乗っていない。結果として、聞く人に物語が見えてこない。
「言葉に気持ちを乗せて!」
わたしも朗読修行時代に、若い先生によく言われた。
どうしたらいいのか。方法を模索したその時の苦しさは、忘れられない。
文を何度も読み、念力のようなもので感情を絞り出し、それが消えないうちに、乗せるべき文を読んで、成功率を徐々に上げていったものだ。
苦しいので、万人に勧める方法ではない。
カルチャーセンターでは、わたしがリードアラウド「苦節10数年」で手応えを感じている、ある方法を使う。
そして、それは実に効果的だと思う。
これ。
感情の解放作戦である。
感情の解放に関して、子どもはうまい。
たいてい「勉強じゃない」と言われると、すぐ解放的になれる。
問題は大人。
行儀のいい、優等生タイプの大人は、かなり日常は感情を抑えているので、特に感情の解放が難しい。
もしかして感情を出す「弁」が退化している?
と思うほどの、頑なに感情を見せない優等生タイプもいる。
そこで、感情の解放には、心の柔軟体操が必要になる。
カルチャーセンターでは、こんなことをして成功している。
例えば、物語に出てくる「tiny tiny」とか「wild wild」といった柔らかい、優しさ溢れる表現。これを硬く、または平坦に、または意味ない抑揚をつけて読んでいたら…
言葉回しのゲームである。
輪になって、これらの形容詞や、形容詞と名詞(warm furなど)の組み合わせに、何かひとつ感情とアクションをつけて、隣の人に向かって言う。
言われた人は、同じ言葉にまず前の人の言い方とアクションをつけてまずマネて言う。
それから、次の人に、新しい違った感情とアクションをつけて言う。
これを回していく。そして、他の語句で続けていく。
シアターゲーム(improvisation)の手法だが、とても表現をつけるうえで有効な演習だ。
この「柔軟体操」自体、楽しいのも大変よろしい。
不思議なことに、参加者に笑みがこぼれる。
身体がほぐれると、いい表現が生まれてくる。
自然な表現があちこちに現れる。
すると、読んでいるひとの表情が緩み、嬉しそうになるのが面白い。
そして、表情は伝播する。