リードアラウドでよく指摘する「ただ普通に読んでいる」と、「表現している」読み方はどう違うのか。
カルチャーセンターの受講生には、絵本のリードアラウドにおいて「まっさら」の人たちがほとんどだ。
その人たちの読み方の特徴は、正確で端正だということ。
「そうじゃない」
と講師のわたしに言われて、どうしたらいいのかと時に憮然とする気持ちも、正直なところあるだろう。
どう、違うのか。
できるだけわかりやすく、その違いを示すことは、指導上大切だろう。
そこで、
自身で、ある一文を、A:ただ「読む」場合と、B:リードアラウドする場合で録音して、聴き比べてみた。
使ったのは『The Happy Day』の一節、
Now, the field mice sniff, the bears sniff, ~と登場する動物たちがsniffする、というところ。
リードアラウド歴が長いわたしには、案外と「普通に読む」、つまり文の内容を伝達目的で読むというのが難しかった。
そこで使った「手」として、
始めに「7時のニュースをお伝えします」
と、NHKニュースを真似て言ってみた。
これが、読み方を変えるのになかなか効果的だった。
さて、そのふた通りの読みを聞きなおすと、あら不思議。
まるで
A:「さて、ネズミそしてクマなど冬眠していた動物たちですが、今や野で鼻をくんくんさせています」
といった報告口調に。
まるで、野や山の春の兆しを伝えるニュースだ。
一方、リードアラウドした方を聞くと、
B:「あのね、ネズミなんだけど、たくさんのネズミが鼻を突き出してくんくんしている。それからクマも、のそっと鼻を出して、くんくん」
という感じ。
全く違う話に聞こえる。
このA, Bを、反対にしたらどうだろう。
ニュースなのにBの調子で読んだら、実にまどろっこしくイライラし、違和感溢れる。
ところが、絵本を楽しませる(表現する)つもりで、Aの調子で読むと、つるんと耳を通過して、単語は聞こえるが絵が見えてこない。
AとBの比較で分かったのは、
まず読む時に、目的を明確にする必要があること。
伝達なのか、表現なのか。
それから録音の音声波形グラフを見てわかる、機械的なことは、
Aの場合は間合いがほぼ均等であること。
音の高低差、音量の大小差が小さいこと。
緩急がほぼ均一だということ。
機械のように規則的に見える。
それに対して、
Bの記録、リードアラウドした方を見ると、
規則性が見えない間が空き、見るからに全てが不規則。
有機的な印象だ。
リードアラウドの上級者なら、この読み分けがそろそろ、できる。絵本のどの一節でもいいので、
A:伝達(「7時のニュースです」と心で言ってから、読む)
B:リードアラウド
と、録音して読み比べてみると面白い。