英語えほん第19夜~And Then It’s a Spring

いつかリードアラウドしたい1冊。

And Then It’s Spring 文 Julie Fogliano 絵 Erin E. Stead 978, $16.99目安のレベル:初級

 子ども時代にとっていた科学雑誌の付録についてきたキンセンカとスイトピーの種。初めて種を蒔いたときの気持ちと、首を長くして芽が出るのを待つ気持ちが、本書を読んで鮮やかに蘇った。
 「First you have brown, all around you have brown」、あたり一面茶色のところに、「then there are seeds(種がある)」。こう本文が始まる。そして、そう、そう、そうだった。「a wish for rain(雨が降って欲しい気持ち)」も。「then it rains(すると雨が降る)」。でもそれだけでは、芽はやすやすと出ない。だが、茶色の地表がちょっと違って見える。「very possible sort of brown(かなり希望が持てるって感じの茶色、だね)」。いいな、こんな表現。ニュアンスのある英語が使えたら、と思うと同時に、子どもたちに接するときの心配りの手本にしたいとも。「まだ茶色だね」と言っては、身もふたもない。
 さて、虫眼鏡まで持ち出して、芽がでたかどうかを探るのは、主人公の少年。だめだ、「it’s just brown sort of brown(ただの茶色って感じ)」。こんな「sort of〜」の繰り返し、どこか大人っぽくて子どもが喜ぶところだ。…一週間たっても芽は出ない。種を食べてお腹がパンパンになった鳥たちや、全体重をかけて土の上をのしのしと歩くクマとか、あらぬことを想像してしまう。もう一週間たって、地表は「the brown, still brown(まだ茶色)」。ただ、地面に耳をつけ耳を澄ますと「a greenish hum(緑っぽいハミング)」がする。これまた素敵な表現だ。期待が高まってまた一週間、前日の雨が上がりよく晴れた日のこと。「all that brown(あの茶一色)」が、なんと!…all around、あの色に。
 英語初級の子どももついて来られそうに短く、でも詩的な文もさることながら、木版と鉛筆による落ち着いた色合いのイラストが秀逸。ツヤ消しした感じが、ぬくもりある優しさを醸し出す。遊び心もある。主人公のお伴、種の代わりに骨を蒔いたイヌや、もちろんニンジンの種を蒔いたウサギ、そしてカメ、小鳥たちの行動を追ってみるのも愉快だ。2011年のコルデコット大賞(米国の優れた絵本のイラストレーターに授与される栄誉賞)受賞者なのもうなずける。

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