リードアラウド講師認定講座第6回報告〜その1

We're Going on a Bear Hunt

これだ!

名作といわれているロングセラーの本書。
実はまだ、子どもたちとリードアラウドしたことがない(10月にブックハウス神保町でお初)。

面白い。
そして子どもの本として必須な印象である「元気」が、湧いてきた。
それというのも、残暑厳しいこの日に、遠いところから集ってくれた参加者たちとの「オーケストレーション」の結果だ。

典型的な絵本よりも、ずっとシーンが多い。
まずは、読む人が集中力を保つことが大切だ。
それを可能にするのは、物語の構成を知る知力だ。

なんだか能天気な一家が、なぜだか「熊狩りに行くぞ!」と言い出して、意気揚々と家を出る。
熊のいるほうを目指す道中に、立ちふさがる困難。
これが、いくつもあるのだ。

ここで、息切れしないよう、その先にあるドラマチックな熊との遭遇をイメージする。
その場面で、子どもたちをドキッとさせよう。
そしてあとに続く、ビデオの早送りのようなユーモラスな「逃走」を読んで楽しませよう。
こういった気持ちが、エネルギーのいる長い「道中」を乗り越えさせてくれる。

演習したのは、「道中」での変化の出し方。
それぞれが自習してきた朗読を聞いた。
その限りでは、みんな「道中」でくたびれてしまった印象だった。
予想通り。

そこでリードアラウド指導者は、奮い立たなければならない。
そうさせるのはなにか。
登場人物の一家だって疲れる。
でも元気に乗り越えていったのは、なぜ?

Swishy swashyやSplash sploshなど擬声語だけが使われる場面を見てみよう。
そう!
ここで困難を乗り越えようと、原始的なことをした結果、元気になっている。
この場面がエネルギー源だろう。
例えば、みんな裸足でドロドロのぬかるみにつかりながら、ベチャベチャ通り抜ける。
たいへんだけど、「ああ、面白かった」と後で子どもが言いそうな経験だ。
こういった場面が全部カラーなのも象徴的だ。
読み手は、この場面でエネルギーを注入すればいい。

擬声語の身体化の演習だ。
原始的なことだからだろうか。
なぜか、身体化の演習(シアターゲーム)は、わたしたちを解放してくれる。
しばらく続けると、みんなの表現も開放的になって、見る人を気持ちよく自然に楽しませる。
エンターテインメントの極意も、こんなところにあるのかも知れない。

「風景を彷彿とさせる」朗読の演習も、興味深かった。
描かれている風景を、頭の中に再現して、「見」ながら文を読む作業だ。
これが難しい。
ただ脳に指令を出しても、わたしたちの神経系は反応しないか、とても遅い。
ところが、シアターゲームで演習すると、とても滑らかになるから驚いた。

例えば、「A river!/A deep cold river.」の二行。
二人組になって、ひとりが演じ(体現し)、演じているのを見ながらもうひとりが文を読むという演習。
普段、朗読では、このふたつのことを、ひとりで同時にやる。
演習としては、ふたりに分けて、文が描く風景を見える化するわけだ。
それぞれの役をやったあと、ひとりで朗読してみると、あーら不思議。
これまで、ほとんどなにも見えない読み下しただけの朗読が、情景が見えてくる朗読に変わった。

うーむ。
ここで思う。
芸の上達を個人の精進にまかせていては、個人間の差が開くし、時間もかかる。
シアターゲーム(or Improv)を考え出した、Viola Spolinは天才だ。
演技と表現の習得に時短をもたらし、個人間の差を縮めてより多くの人を上手くする。
実に合理的。
絵本のリードアラウドも、合理的に上手くなれるよう、もっと演習の工夫をしていこう。

(つづく)

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