新英語よみもの千夜一夜第3夜〜Monster

Monster

Monster

● データ:
 (文)Walter Dean Myers 
 (出版社)Amistad  (発行年)1999
 (レクサイル)670L   (ISBN)9780064407311
 
●この本について:
 「人を見たら泥棒と思え」の「人」の前に「黒」を入れると、アメリカのよくある(あった?)偏見になる。アメリカで、Being young and black menとはどういうことか。その理不尽な社会の一面を見せてくれるのが本書。
 NYハーレムに住む16歳のアフリカ系の主人公は、映画作家を目指すまじめで知的な高校生だ。たまたま入ったドラッグストアで強盗殺人事件に巻き込まれ、犯人のひとりとして逮捕されてしまう。prosecutor(検察官)は有罪を疑わず少年をMonsterと呼び、市民で構成されるjury(陪審員団)には根強い黒人偏見がある。白人女性のattorney(弁護士)も、どこまで無実を信じてくれるか。
 殺人犯としてdeath penalty(死刑)さえありうるとおびえる主人公の独白は、その息づかいが伝わる手書き風の字体で綴られる。一方、周囲の様子は、主人公の書く架空の脚本という形で客観的に綴られ、活字体だ。この目を引くユニークなスタイルは、あまり読書家でないティーン男子にも読んでもらおうと、作者が意図したしかけだろう。文体ともどもcoolな印象なうえ、視覚的にも飽きさせない。これらの恩恵に、英語学習者も浴することができる。
 アメリカの司法は、犯罪をどう解明しどう裁くか。アフリカ系ティーンの目で見たdetention center(少年院)の恐怖の拘置生活とその制度とは。これらがぐいぐい分かって行くのも魅力だ。

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