リードアラウドの約束「むにゃむにゃでもOK」って?

リードアラウドという、英語を母語としない人でも英語絵本を楽しめる読み方。
これを「指導法」として固めるまでには、生身の子どもたちの前に絵本をもって立つというフィールドワークによる試行錯誤があった。
参観してもらった大人の質問に答えることが、これまたとても有意義だった。

そして、多くの質問に答えながら、共通する感想を持った。
それは、
「日本の学校で英語を勉強した人は、自分の学んできた方法に随分と縛られているなあ」
ということ。

たとえば、ある絵本に「He had known it would.」という文があるのを見て、
「これは過去完了型で、おまけに複文。中3レベルです。子どもには難しすぎるのでは?」
と言ってくる人がいる。

また、「This is the house that Jack built.」という文を見ると、
「中1程度ではまだ習わない関係代名詞が使われていて、小さい子に教えるには早いのでは?」
なんて言うのだ。

さらに、「過去形が使われていない絵本を使うべきでは?」には困った。
実生活ではごく早い時期から、過去形を使う。
だから、絵本でも当たり前のように使われている。

どうやら、日本の学校で学んだ順番が、体に染み付いているらしい。
そして、子どもに絵本を読むことが、英語を教えることと同義になっている。

また、学校で習った逐語訳の方法。
文の後ろから訳す。すべてきっちり訳す。
多くの大人は、こうしないと落ち着かないらしい。

例えば、
This is the house that Jack built.
を「これはジャックが建てた家です」と訳す。
まあ、これくらいさっと目に入るような短い文なら、後ろからでも訳しやすい。
でも、自然な理解の流れで訳すとこうなる。
「これは家だよね。そして、これ、ジャックが建てたんだよ」

きれいに訳すことが目的ではなく、楽しむことが目的。
頭から見ていって、内容がわかればいい。
思考の流れに沿うようにすれば、子どもに(実は大人にも)分かりやすい。

一字一句、きちんと訳してから先に進むという縛りは、「英語は勉強」という観念が染み付いているからだろう。
もちろん、中学生以上なら、英語=勉強ということが多い。
しかし、小学生以下の子どもにとって、絵本はお楽しみ。

いい絵本は、絵を見るだけで内容をさっと掴めるよう工夫が凝らされている。
だから、分かるものや分かりそうな英文だけ拾って、飛び石のようにポンポンとテンポよく読んでいきたい。
こういったことが、「リードアラウドの4つの約束のうちのひとつ、「(最初のうちは)読めないところは、むにゃむにゃでもOK」へと繋がった。
歌でいうと、歌詞が分からないところを「ふんふん」と鼻歌にするようなことだ。

完全に歌えるように、テンポを落としてゆっくり歌ったら、歌の魂のようなものが抜けていく。
絵本を読むのも、似たところがある。
「飛ばしちゃだめ。全部読めるまで先へは進まない」とせずに、「読めるね!」と読めたところを褒め、とびとびでも全体を掴む。
読めないところを強調せず、読めるところを勇気づけて、少しずつ読めるようにしていく。

こんな方法で、英語絵本を楽しむ子どもたちを増やしていけたらと思う。

This Is the House That Jack Built  8×8

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