絵本と屏風絵

10年余前、まだコルデコット賞をTuesdayでとったばかりの作者、David Wiesnerさんにインタビューしたことがある。

そのとき、自分の絵本は日本の屏風絵や絵巻物に影響を受けているという話を聞いた。

何となく、「ああそうか」とTuesdayでも、Free Fallでも、そんなページ割などを確かに確認できた。

だが、まあそれだけ。
屏風絵も絵巻物にも、大した興味を持たなかった。

ところが、それから10年余たった先日のこと。

「おひとりさま」で、雅な屏風絵を前に昼食の松花堂弁当を、静かに待っていたとき。

「Aha!」

平安の世の貴族の邸宅か別荘でのちょっとした物語を描いた、その屏風絵の楽しみがわかった、と思ったのだ。

いやあ、「絵本絵本」と日頃、近視眼的にそれだけを見ることが多くなって、屏風絵なんて随分とご無沙汰していた。
それに、美術史上の知識程度で、絵本のようには見なかった。

だが、「これはまるで(文字なし)絵本だ!」と、それこそ、膝を打ちたかった(が、静かな「おひとりさま」の表面は繕った)。

そう、この形式は、まるでWiesnerが得意とする、文字なし絵本だ。

雅な時間が流れるその静かな昼食所、目の前の屏風絵とひとりで「にらめっこ」したおかげで、それを「絵本」として楽しめることを発見した。

普通、絵本は同じサイズの紙に絵を描いて綴じてあるが、屏風絵はそれを大きな紙に描いたと考えればいい。

絵本は最初から最後までページを繰って話が進むが、屏風の場合はいっぺんに開けてあって、しかもそれが、くっついている。
そして、どこから読んでも(見ても)いい形式になっている。

今や絵本界の第一人者となった作家が学生時代に強い影響を受けたという、わが国の伝統的絵画を、今頃になってだが、楽しめた。

これで今後の楽しみが、ひとつ増えたというもの。
しめしめ。

P.S.
Wiesner作品では、適当に「文字あり」のArt & Max をリードアラウドに使っている。