ライラの冒険:The Golden Compass映画と本

 The Golden Compassの映画が日本でやっと公開される。『ライラの冒険:黄金の羅針盤』というタイトルだ。
The Golden Compass: Story Of The Movie (Golden Compass)The Golden Compass: Story Of The Movie (Golden Compass)』は映画のストーリーブック。いい場面がきれいな写真で載っていて、文章量もほどほどで悪くない。

 原作The Golden Compass (His Dark Materials, Book 1)The Golden Compass (His Dark Materials, Book 1)』はけっこう長い。そのうえ全3部作だから、読み始めるのにちょっと勇気がいるかも知れない。でも映画だけでは、テンポが速くてよく分からないところ、見逃し、聞き逃しが出てくる。現に、映画を見たが原作を読んでいない人と話をして、彼が疑問に思ったことを、わたしがほとんど教えてあげられた。原作のおかげである。

 原作が好きでも映画でがっかりすることがよくあるが、本作は多分平気だろう。わたしはかなり満足。キャスティングに原作者も関与したというだけあって、イメージが壊れることがなかった。贅沢をいえば、ライラの叔父アスリエールが、ちょっと若くてハンサムすぎるかな。何せ、新『007』のジェームス・ボンドをやった俳優だから。

 映画も本と同様、3部作になるはずだ。この第1部は、実にあっという間に終わり、終わり方も「今すぐ先を知りたい!」とじらせるような、ちょっと意地悪?な終わり方だ。そんなとき続きは本で……。
The Subtle Knife (His Dark Materials, Book 2)The Subtle Knife (His Dark Materials, Book 2)

The Amber Spyglass (His Dark Materials, Book 3)The Amber Spyglass (His Dark Materials, Book 3)

英語の本をどう読んで、英語力をつけるの? その3

 英語学習者にとって福音かも知れないGraphic Novelsは、マンガを含めた絵本と読み物の中間で、「文学性」があるものと位置づけられているようだ。だから、アメリカン・コミックス、『スーパーマン』だとかは除外される。

 このグラフィック・ノベルが、アメリカ出版界で目につくようになった。そして、その解釈が広がり、とうとう自らグラフィック・ノベルと称する本が、コルデコット賞を受賞した!2008年はそう言う意味で、重要な年かも知れない。

 その受賞作The Invention of Hugo Cabret
文/絵 Braian Selznickは、こんな本。
The Invention of Hugo CabretThe Invention of Hugo Cabret
 「グラフィック・ノベル」という、絵本と読み物の中間のようなフォマットに挑戦した画期的作品である。分厚い見かけは、膨大な文字量を連想させる。しかし、第1章。鉛筆画が、クローズアップを効果的に使いながら、古い無声映画の場面のように続く。20世紀前半、パリの駅を主舞台に、秘密めいた少年と老人、そして謎のからくり人形が関わる物語らしい。絵のみだから導入部分42ページも一気に進む。しかし、頭には謎が渦巻く。と、ちょうどそこから文字だけのページが始まる……。
 時計職人の父が修理していたからくり人形を、父の死後、主人公の少年ヒューゴがどうにか完成させる。人形は「メッセージ」を綴り始め、それはある忘れ去られた天才映画作家の存在を蘇らせる……。
 映画が魔法のように感じられた時代の熱気と、人々に与えた夢が迫って来る。読者は、絵の時は速く、文字の時はゆっくり、それをわくわく交互に繰り返しながら、ついに最終章にたどり着くのである。(c.2008 大島英美/Emi Oshima)

英語の本をどう読んで、英語力をつけるの? その2

英語の本を読む習慣がなかなかつけられない。英語圏の子どもたちも同じだ。絵本卒業後に、『Frog and Toad』シリーズをはじめとする「early readers」とも呼ばれるジャンル、例えばSmall Pig (I Can Read Book 2)
Small Pig (I Can Read Book 2) 』のようなものまではどうにかたどり着くのだが、そこからのハードルが高い。
日本の中3レベルであれば「early readers」を読む英語力があるし、絵もかわいいものが多いので読む気にもなる。だが、そこから先、高校に入って受験やらで気が急ぐこともあって、長文問題は解いても、本としてまとまったものを読む機会がなかなかない。ここからが問題なのだ。

ネイティブも日本の英語学習者も、このステージは同じ。このハードルを越えないと、英語の本を楽しみとして読めるようにはなれない。そこで、攻めるべきは「チャプターブック」なのだ。
「Chapter books」は、短いchapterで構成されている。また全ページが少ない。このふたつの形態を持った児童書を一般に「チャプターブック」と英語圏では称す。英語圏では8〜10歳あたりが主な対象だった。
例えば、『Magic Tree House』シリーズのPolar Bears Past Bedtime (Magic Tree House 12, paper)Polar Bears Past Bedtime (Magic Tree House 12, paper)』や『Time Warp Trio』シリーズのViking It and Liking It (Time Warp Trio)Viking It and Liking It (Time Warp Trio)』などなど、挙げればきりがないが、こうしたシリーズものが典型的だった。

「だった」と過去形で書いたのには、わけがある。ここ7、8年の傾向ではないかと思うのだが、対象年齢が上方に広がったのだ。チャプターブックの形態で、対象が11、12歳またはそれ以上のものが出て来たのだ。
以前から、Sarah, Plain and TallSarah, Plain and Tall』やThe Heavenly VillageThe Heavenly VillageSounderや『Sounder』 など、内容が深く、年齢にほとんど関係ない名著といえるチャプターブックはあった。だが、近年は嬉しいことに、こういった読み応えのあるものが増える傾向 にある印象だ。わたしは、これが日本人の英語学習者の多くが読むべきジャンルだと常々思い、機会あるごとに熱く話したり書いたりしている。

この傾向に平行し、ここ3、4年の傾向として見られるのが「graphic novels」というジャンルの攻勢。今もっとも熱い例はThe Invention of Hugo CabretThe Invention of Hugo Cabret』。
素晴らしい! コルデコット賞受賞のイラストもさることながら、物語がどんどん読者を引っ張って行く。読み終わるのが惜しかった。詳しくは、別の日に。

この「graphic novels」、英語力のステージでいえば、絵本→early readers→chapter books→middle readers→young adultだったところに、early readersの次、またはchapter books と平行したステージに入り込んだ感じか。傍流と言ってもいいかもしれない。この形態のまま「young adult」のジャンルまでカバーしだしたのだ。

ではこの「graphic novels」とは?

つづく。

キッズブックスのブッククラブで言えば、チャプターブックをたくさん読むコースは、この春(4月配本。現在準備中)から「Dコース」それまでの名前で言えば、「レベル3」
キッズブックス・ブッククラブ レベル3 (BCおためし)キッズブックス・ブッククラブ レベル3 (BCおためし)』になる。

金曜日の夜、英語絵本とクレヨンハウスの美女たち

 バレンタインが近い金曜日の夜7時30分近く、クレヨンハウス絵本売り場に、美女がひとりまたひとりと集まって来た。

 大人を対象にした初めてのリードアラウドだ。テキストは、この季節柄
Love Is...
Love Is…』を選んだ。
 英語の絵本を声に出して読んでみたい大人が、表参道に、それも冬の寒い夜に、いったい集まるのだろうか。と思いきや、サクラも入れると10人近くが席に着いた。

 見ず知らずの女性たちだが、なんだか「どこかでお会いしましたか」と尋ねてしまいそうな既視感のようなものを感じる。そんなこともあって馴れ馴れしくなってしまうのだが、みなさんもすぐに打ち解けた(上手にふりをしてくれた?)。

 リードアラウドすることは、英語で、自分の心を表現することにつながる。同時に「読解」と「表現」ふたつのことを行える。高い声・低い声、強さ・速度の違う読み方、これらをとりまぜて、棒読みからの脱却を図った。

「洋書絵本」の楽しみ方のひとつ、リードアラウド。日本の人がまだあまりしていない楽しみ方を提案したつもりだ。新しい楽しみができると、自分では意識しないかもしれないが、ちょっと幸福度が増すものだ。あの晩の1時間が、そんな役目をしていたら嬉しい。

 少なくともわたしの幸福度は、おかげ様でこの日以来、またほんの少し上がった……。みなさん、どうもありがとう。

 次回は未定だが、クレヨンハウスからは「定期的にしましょうか」とのご提案をいただいた。奇数月が日曜日に親子中心のリードアラウド(次回は3月23日、テキストは『Mother, May I?』)で、偶数月は夜に大人向けかな。
Mother, May I?
Mother, May I?

ポートランドでのこの冬の収穫:その2

 今更だが、ポートランドでの恒例のbook huntingで見つけた本のうち、現在も手に入るものが、やっと入荷した。
Gallop!: A Scanimation Picture Book
Gallop!: A Scanimation Picture Book
 これは、飛び出さないが、動くしかけ絵本。あのサブダも絶賛。ベストセラーのため品切れになっていた。わたしは、ポートランド美術館のショップで見つけた。そのしかけは、「Scanimation」と名付けられたもので、格子をずらすことで絵が動いて見えるという仕組み。ずらす早さで速く動いたり遅く動いたりとてもアナログだが、それを絵本にしたところが大変新鮮。百聞は一見にしかず。見なきゃだめ。
Eye Think Retail Shop

 日本だけでなくアメリカでも、子どもたちの本離れが懸念されている。そこで救世主として登場したのがgraphic novels。日本のマンガのこともgraphic novelsと呼ばれるが、ここで紹介するのはもう少し文字が多いもの。小学生から中学生向けで、読書にまだ抵抗がある子どもたちを、うまく読書に引き込むためにgraphicが取り入れられている。
 そのひとつで、NYタイムズの児童書ベストセラーリスト#1に輝いたのが、
Diary of a Wimpy Kid
Diary of a Wimpy Kid
“a novel in cartoons”というキャッチコピーが付いている。開くと、手書き風の文字が、日記帳を模したページに並び、1ぺージの40%程度が「ヘタウマ」風のマンガだ。背が低く、弱虫な、まだ髭が生えるきざしもない中1の男子の日記の体裁だ。本のデザインとしてもおしゃれで、大人が手にしてもそう幼稚に見えない。

 ポートランド空港内のPowell’s Booksで、ある小学生の年子のきょうだい(男女)が、この本をめぐって喧嘩をしているのを目撃した。好きな本を1冊ずつ買ってもらえることになったふたりが同じ本『Diary of a Wimpy Kid』を選んでしまった。母親が同じ物はだめだと言ったので、どちらか一方が他の本を選ばなければならなくなったのだが、ふたりとも譲りたくないという……。
 飛行機の出発の時間が近いのに、子どもの喧嘩聞き耳をたてていた大人のわたしもナンだが、つまりこの本は人気が高いということだ。