コミュニケーション能力育成とシアターゲーム〜リードアラウド研究会


小学校の「外国語活動」を「支援員」として手伝った1年半。

振り返って、文科省が指導要領でうたっている外国語教育の目標

「コミュニケーション能力の育成」

とは、具体的には何のことだったのか考える。


一番に浮かんでくるのは、
生徒たちがタブレットを駆使して行った、「自己紹介」に始まって「将来の夢」や「私たちの学校、町の紹介」などのプレゼンテーション。

これが「目玉」だったのかもしれない。

 

「コミュニケーション能力の育成」の具体化として、優等生的な回答の一つではあるだろう。


現在公立の小学校では、タブレットが生徒一人に一台貸与されている。

だからプレゼンテーションの下調べに必要な百科事典や世界地図や統計なども、図書館に行かなくても自在に自宅で調べられる。映像まで手に入る。

録音も録画も編集も自由なので、発表もタブレットでいろいろ工夫できる。

 

しかし、問題がある。

これらの調べたりする段階に、授業時間のほぼ2/3ほど使うのだが、小学生の典型的な英語力では、その間ほとんど全てを日本語で行うことになるのだ。

つまり、直接的にはその間の授業の半分以上は「外国語活動」になっていない。

 

調べたあとに、それを英語にして発表するプレゼンテーションが続きはする。

だが、今の外国語活動の「プレゼンテーション」は、たいてはこんなではないだろうか。

恐らくわたしが実際に現場で手伝った限りでは、

生徒が日本語で書いた原稿を、指導者が易しい英語にしてやり、生徒自身では何て書いてあるかわからない部分があったりしてもそれを読む(指導者に説明する時間的な余裕はない)か、カタカナを振ったり、丸覚えして発表する……

というものではないかと思う。

 

こうした発表する級友の「英語によるプレゼンテーション」を聞いても、声が小さかったり、読み間違いがあったり、カタカナ英語だったり、英語そのものの意味がわからない。

多くは儀礼的に拍手を送って終わる。

みんな「行儀よく」「耳を傾け」、発表者も何か「英語でしゃべって」、授業の仕上げとして小綺麗にまとまって見える。

 

しかし、

日本語で調べて発表する学習なら、他の科目で、恐らくもっと時間をかけてやってきているだろう。

「台本」の丸覚えや棒読みを一方向的に聞かせることを、コミュニケーションと呼べるのだろうか。

 

「外国語活動」として指導者が考えるべきは、英語を使う環境での、もっと人と人を英語で繋ぐ、コミュニケーション能力の育成なのではないのか。

赤子が言葉を取得する、原初の過程のような……。

 

それは、場面としては、まずはリラックスしているところで始める。

緊張をほぐし、言葉(英語)が、spontaneousに(自然に)出てくる「しかけ」を、英語環境で作る。


シアターゲーム(参照1)という、リラックスさせ言葉や感情が自然に出てくる環境作りだったり「しかけ」のようなものが、特に欧米の教育界で使われることがある。

もしかしたら、日本人という国民性からも、語学学習とか「コミュニケーション能力育成」に、有効ではないかと思う。

 

例えば、こんなゲームがある。

「Hello Circle」:

生徒みんなが、輪になって立つ。ひとりずつ「Hello」と言っていく。

次に、その「Hello」にsillyだったり、angryとかhappy, sad, wonder, disgustingなど、何かしらのemotionを付けていう。このとき、ジェスチャー付きにするのもいい。

いろいろ、Helloにつける感情を変えながら続けていき、愉快な表現に笑ったりしながらリラックスし、次第にspontaneousに感情が乗った「Hello」、他者に伝わりやすい(棒読みのようではない)英語を発せられるようになる。

「Hello」の一言でも、棒読みでは人の気持ちに触れないが、何かしら感情を乗せれば、相手に伝わってコミュニケーションが始まる。

こんな第一歩から、「伝えること」を身体に染み込ませつつ、小学校の「外国語活動」を始められたら、と思う。

 

 

8月27日開講1日講座:

先生のための英語シアターゲーム講座:小学校の外国語活動・外国語科での実践方法】

(参照 1)シアターゲーム

もともとは、俳優の表現力と即興力を高める演習として、20世紀になって始められた。演技指導者であったViola Spolinが、「theater games」として体系づけた。のちに、参加者の集中力や発想力を高め、共感したり協同したりする力や自己肯定感などを、効果的に養うことが認められ、教育界やビジネス界にも広まった。Improv games、インプロとも呼ばれる。

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