課題書だった『But Not the Hippopotamus』
は、押韻がネックとなって日本語訳がないようだ。そのせいもあって、あまり日本では知られていないが、英語圏ではもう30年以上も人気のロングセラー。
本年度の認定講座では、みなさんのリードアラウドを、吸引力というかエネルギーを、より強く発するものへと、磨きをかける心算だ。
今回、指導の演習では親子を対象としたが、その成功の秘訣は親御さんの感情を、わたしたち指導者が少しでも解放できるか、にかかっている。
そのことを、再確認した。
そのために必須のwarm-upは、いつものword ball。指導者がエネルギーをみせる最初の場面だ。「マネてください」と言っても、小さいふりになるので、こちらがいつも以上にふりを大きくしなければならない。
さてそれから、この本を手にした親御さんたちが、指導してもらいたいと思うことを考える。
今時の親御さんは、どのへんまで「わかっいる、指導はいらない」と思っていて、どこから「指導して欲しい」のか。
そこのところの線引きも微妙で、わたしの経験からの境界を伝授した。
「簡単だ」とパパやママが思っているところを、くどくどわたしたちが説明したら、うるさい。でも実は「ココ、どうするの」というところを外したら、集まった意味がない。どう何気なくご指導するか、そこもコツである。
まあ、こんなところを話ししたが、実は、わたしたちの圧倒的な表現、素晴らしいリードアラウドを聞いていただいて、「おお、これはプロだ」と思っていただけると、その場の空気が違って、とてもやりやすくなる。
では、本書ではどういう読み方が「プロ」と思っていただけるだろう?
レジュメにも書いたが、最近の2年間、ずっとわたしは言っているつもりだが、まずは本文が「だれの声」なのか、をしっかり理解して読み分けることが、第一歩。
そして次は、場所によって「異次元的な」声をだすこと。(発声の基礎固めが必要)
本書は、ナレーターが語っている形なので、そのナレーターはどういう人か、を考える。
ナレーターの正体は、ごく普通に考えると、動物たちやカバを暖かく見守る、保育者やそのようなタイプの人だろう。認定講師2,3年生以上の人なら、まあ楽にこのタイプのナレーターになれそうだ。
ではベテランなら?
そろそろ、そういったベテランのみなさんにはお馴染みの「狂言回し」「トリックスター(trickster who exhibits a great degree of intellect or secret knowledge and uses it to play tricks or otherwise disobey normal rules and defy conventional behavior. )」で演じて欲しい。
「イメージがわかない」という意見があったので、いくつか次のような例をあげたが、なにぶん昭和の人間なので、例が古かったかもしれない。
- 黒澤明監督の映画『乱』の、主人公仲代達矢さんにくっつく小姓、ピーター(池畑慎之介)
- 『秘密の国のアリス』のウサギ
- シェークスピア『真夏の夜の夢』の妖精のパック
- 『Charlie and the Chocolate Factory』のMr. Wonka(Johnny Depp)
- 『長くつ下のピッピ』のPippe
- 日本の民話に出てくるカッパ
など。挙げたらキリのない、ひとつの典型的キャラクターだ。
共通しているのは、個性をgreat degreeに出していること。エネルギッシュ。
台詞に力が必要だ。ぬるっと「But not the hippopotamus」と言っていてはだめだろう。
この日、初っ端の「朗読1」と、しばらく演習した後の「朗読2」を比べた。
おお。
意識改革で、すっかり様相が変わった……。
特にアニメ『Lion King』のZazu(hornbillというトリ)をイメージしたリードアラウドが、まったく最初のものと様変わりしたAさん。声にも力が入り、血が通う読みになっていた。素晴らしい。
こういうように、短時間で表現が豹変し、心に伝わるようになる現場にいあわせると、わたしたちは実に人間らしい営みをしていて、それはしみじみとした喜びにつながるのだなあと、思えてくる。
そして、特にリードアラウドの喜びには「おまけ」があって、自分だけでなく他人の喜びにも繋がることが、これまた嬉しい。
ああ、まだまだ続けたい!