2021年絵本リードアラウド認定講座第1回報告〜リードアラウド研究会

課題書だった『But Not the Hippopotamus』

は、押韻がネックとなって日本語訳がないようだ。そのせいもあって、あまり日本では知られていないが、英語圏ではもう30年以上も人気のロングセラー。

本年度の認定講座では、みなさんのリードアラウドを、吸引力というかエネルギーを、より強く発するものへと、磨きをかける心算だ。

今回、指導の演習では親子を対象としたが、その成功の秘訣は親御さんの感情を、わたしたち指導者が少しでも解放できるか、にかかっている。

そのことを、再確認した。

そのために必須のwarm-upは、いつものword ball。指導者がエネルギーをみせる最初の場面だ。「マネてください」と言っても、小さいふりになるので、こちらがいつも以上にふりを大きくしなければならない。

さてそれから、この本を手にした親御さんたちが、指導してもらいたいと思うことを考える。

今時の親御さんは、どのへんまで「わかっいる、指導はいらない」と思っていて、どこから「指導して欲しい」のか。

そこのところの線引きも微妙で、わたしの経験からの境界を伝授した。

「簡単だ」とパパやママが思っているところを、くどくどわたしたちが説明したら、うるさい。でも実は「ココ、どうするの」というところを外したら、集まった意味がない。どう何気なくご指導するか、そこもコツである。

 

まあ、こんなところを話ししたが、実は、わたしたちの圧倒的な表現、素晴らしいリードアラウドを聞いていただいて、「おお、これはプロだ」と思っていただけると、その場の空気が違って、とてもやりやすくなる。

では、本書ではどういう読み方が「プロ」と思っていただけるだろう?

 

レジュメにも書いたが、最近の2年間、ずっとわたしは言っているつもりだが、まずは本文が「だれの声」なのか、をしっかり理解して読み分けることが、第一歩。

そして次は、場所によって「異次元的な」声をだすこと。(発声の基礎固めが必要)

 

本書は、ナレーターが語っている形なので、そのナレーターはどういう人か、を考える。

 

ナレーターの正体は、ごく普通に考えると、動物たちやカバを暖かく見守る、保育者やそのようなタイプの人だろう。認定講師2,3年生以上の人なら、まあ楽にこのタイプのナレーターになれそうだ。

ではベテランなら?

そろそろ、そういったベテランのみなさんにはお馴染みの「狂言回し」「トリックスター(trickster who exhibits a great degree of intellect or secret knowledge and uses it to play tricks or otherwise disobey normal rules and defy conventional behavior. )」で演じて欲しい。

「イメージがわかない」という意見があったので、いくつか次のような例をあげたが、なにぶん昭和の人間なので、例が古かったかもしれない。

  1. 黒澤明監督の映画『乱』の、主人公仲代達矢さんにくっつく小姓、ピーター(池畑慎之介)
  2. 『秘密の国のアリス』のウサギ
  3. シェークスピア『真夏の夜の夢』の妖精のパック
  4. Charlie and the Chocolate Factory』のMr. Wonka(Johnny Depp)
  5. 『長くつ下のピッピ』のPippe
  6. 日本の民話に出てくるカッパ

など。挙げたらキリのない、ひとつの典型的キャラクターだ。

共通しているのは、個性をgreat degreeに出していること。エネルギッシュ。

台詞に力が必要だ。ぬるっと「But not the hippopotamus」と言っていてはだめだろう。

この日、初っ端の「朗読1」と、しばらく演習した後の「朗読2」を比べた。

おお。

意識改革で、すっかり様相が変わった……。

 

特にアニメ『Lion King』のZazu(hornbillというトリ)をイメージしたリードアラウドが、まったく最初のものと様変わりしたAさん。声にも力が入り、血が通う読みになっていた。素晴らしい。

こういうように、短時間で表現が豹変し、心に伝わるようになる現場にいあわせると、わたしたちは実に人間らしい営みをしていて、それはしみじみとした喜びにつながるのだなあと、思えてくる。

そして、特にリードアラウドの喜びには「おまけ」があって、自分だけでなく他人の喜びにも繋がることが、これまた嬉しい。

ああ、まだまだ続けたい!

 

 

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