ローマ在住の日本人声楽家、平山美智子さんが94歳でなくなった。
90歳のときのインタビューで、晩年に山田耕筰の曲を歌ったことについて触れていたのを聞いて、ああやっぱり、と共感した。
たとえば『赤とんぼ』。「深いです」「歌えば歌うほど深さがわかってくる」と話し、例として「十五で姉やは嫁に行き/お里のたよりも〜」のところを取り上げていた。
その部分の「たより」のところ。
歌うと涙が出ると。
そう、彼女が「たより」と口ずさんだだけで、その温かみと哀しみが押し寄せて、感無量にこちらもなってしまう。
これだ!
この心。
言葉に宿るイメージと万感の思いを、瞬間的にまずは頭に浮かび上がらせる感性と、
それを言葉に乗せる技術が、
聴く人の心にも響く表現になる。
平山さん自身の言葉を聞いてください。