リードアラウド・ワークショップで参加者は、いろいろな練習や模擬授業を通して、朗読と指導法を磨く。
登場者や場面を彷彿とさせる朗読と、対話を通して生徒のやる気を引き出しながら進める指導法も、くせのついていない初心者であればあるほど、あるところまでは比較的早く習得ができる。
だが、その後に壁が待っている。
ベテランの場合は、直接この壁の前に立っている状況だったりする。
朗読なら、表現がパターン化した状態。観念的な読み方で、聴衆に違和感を抱かせる(我慢を強いる)。
指導法なら、想定内の進行で進め、説明の多い指導。生徒に我慢をさせたり、飽きさせる。
これらは、思いのほか分厚い壁となって指導者の前に立ちはだかる。
壁を打ち砕く策を、試行錯誤してきた。
「芸を盗む」ことを推奨もしてきた。
個別的には成功もあるが、なかなか広範性のある指導の決定打が見つからなかった。
そんなときに出会ったのが、シアターゲーム(インプロ)だ。
インプロ、improvisationとも呼ばれるシアターゲームを、まず本で学んだ。
ビデオで学んだ。
そして、ついにアメリカのワークショップで実際に学んでみた。
これだ。と直感して始めて、
これだ。と確信。
リードアラウドの指導者として育つための訓練に、このシアターゲームがもってこいだということのほかに、もうひとつ素晴らしいことがあった。
リードアラウド指導者が指導する生徒たちにも、このゲームが使えること。
生徒のやる気を引き出す。
クラスが和やかになる。
解放されるので、発言が多くなる。
英語で遊べば、英語が身体化する。
など、いいこと尽くめ。
指導者は指導が上達し、生徒は英語が上達する…なんて!
あともうひとつ、おまけがある。
実際にアメリカでワークショップに参加してみて、実感したこと。
「ああ、楽しい」という気持ち。
それが、刹那的なものではなく、適度に頭を使った心地いい疲労感もある。
でもその使った部分が、いつもと違う感覚。
そう、ちょうど筋トレした後のような、普段使わない筋肉を使ったという充実感に近いものだ。
耕していないカチカチの土を、耕した後のような、大地と伴に感じる爽快感。
それから、発想のチャンネルが掘り起こされたような快感。
詰まっていた管が通ったようなすがすがしさ。
また、これまで見ていた風景は、曇ったメガネで見ていたように思えるほど、景色がよく見えてくる感覚。
心から笑えるものが増え、また笑うことに戸惑いが消える気持ち。
いやはや、驚いた。
これらは、リードアラウドにプラスになるものばかり。
シアターゲームとリードアラウドを、さらに密に繋げていこうと思う。