「感情を入れさせる!」〜キッズブックス英語スクール

子どもの英語での最難関、「声を出させる」をクリアすると、第二の難関「感情を入れさせる」指導の難しさが待っている。

これまで、少なくとも5年くらい前までは、中学、高校の英語で、このことはほとんど問題とされなかった気がする。昭和、平成と、正確に「読字(decoding)」できればよしとされてきた結果、日本で英語を学んだ人たちの英語はとても平坦な印象がある。

語学はコミュニケーションの手段だ。言葉には感情が乗っているのに、英語になるとなぜか平坦。または日本語でも書かれたものを音読すると、いわゆる棒読みになったりする。感情あっての言葉なので、それがないと相手に伝わりにくい。英語ならばなおさら、「わけわかんなーい」だろう。日本人の英語の伝わりにくさを発音のせいだと思い込んでいる人が多いが、たとえばNYに行って耳に入ってくる英語を聞いてほしい。ほとんど「発音が悪い」。おまけに文法が間違っていることもしばしば。でもそれなりに通じあっているのは、そうした「英語」に伝えたい感情が乗っているからだ。

文法も発音もしっかり学びたいが、その前に、通じやすくする一番の技術、英語に感情を乗せる、このことをリードアラウドを通してスクールでは学んでもらう。

どう学ぶのか。日本人の大人、それが英語の先生方であっても、母語でない英語に感情を乗せて読んだり言ったりするのは、意外と難しい。急に笑ったり、泣いたりできないように、本に書かれた感情を読みながら瞬時に感情に出すのには、ウォームアップやある程度の訓練がいる。

そこで、またまたシアターゲームの登場だ。スクールでも一期一会のリードアラウドのイベントでも、今ではほとんど必ずシアターゲームの時間をとっている。Word Ballゲームでは、ボールを投げながら英語(単語、句、節、短文など)を相手に投げる。ボールでも言葉でも、普通は「投げる」ときには対象の人がいて、自然とその人に向けたボールであり言葉になる。ボールという具体的で目に見える投げるものと一緒に言葉を「投げる」だけ。平坦でどこに向かうでもなかった言葉に方向や対象が与えられ、そのことで血が通う。ヒトの脳は不思議だ。

言葉に感情を入れると通じやすくなり、コミュニケーションが成り立ちやすくなる。でもそれだけではない。それと同時に、自分の記憶にその言葉が引っかかって留まりやすくなる。単語のまる覚えが、すぐ「まる忘れ」になるのは、その言葉が脳の短期記憶装置にしか入らないから。感情を動かすと記憶が中期くらいの記憶装置に入り、忘れにくくなるのだろう。認知科学の発達で、このようなことも推測できたり実証できたりするようになった。

「感情を入れさせる」ことが、表現に大切なだけでなく、語学学習に不可欠な語彙の定着がなされやすくなる。血の通った、通じる英語を学ばせたいのと同時に、科学的に意味ある学び方をさせたいものだ。

声を出させる!~キッズブックス英語スクール

英語絵本を表現豊かに読む、リードアラウドで英語を学ばせるスクールだ。英語が初めての子どもが、たいてい最初にチャレンジすることになるのは「大きな声で言う」だろう。未就学児でも小学生でも、英語という初めての言葉で「大きな声」に戸惑う。

子どもなら普段は「パパー!」「ママー!」などと必ず出しているはずの元気な大声、そのボリュームがたとえば「No!」という一音節の簡単な言葉ででも出ない。

「声を出させる」が意外と、英語教育で難しいところだ。ある程度、読めるようになっても、注意しないと、もぞもぞ小さい声になっている。

さあ、どうする?

これには、シアターゲームがいい。どうやら、大きな声を出すスイッチというものがヒトにはあって、それを押して脳へ伝える神経回路が普通の思考で使われる回路と違うようだ。反射的な回路だろうか、これを反応させるのに、シアターゲームと呼ばれる演劇で始まった訓練のゲームが効く。

たとえば、生徒3人を椅子から立ち上がらせて(着席しているというのも声が出にくい原因のひとつ)、前に出す。手を繋いで輪を作らせ、しゃがませる。しゃがんでいる体勢から徐々に立ち上がりながら、「No!」だったら、noを、1から10のボリュームにあげて10回言わせる。その際、指導者が指で1から順に数を10まで示す。

これをすると、最後10のところでは、ついに「TEN!!!」という雄叫びが聞けることもしばしば。これがwarm-upになって、声が出やすくなる。回路が繋がった、という感触だ。物理的な「声」だけでなく、「発言」という声も出やすくなり、クラスが活発になるから不思議なものだ。

300を越す数多くのタイプの違うシアターゲームがある。それらをうまく使い分けると、椅子にじっと座って頭からひねり出そうとしても出ない種類のヒトの力を、違う回路(即興的回路?)を開通させて引き出すことができる。語学を楽しめるレベルまで上達させるのには「自動化」(記憶された知識がすぐに使える意識の部分にプールされること)が必要だと、科学的な第二言語研究で定説になっている。この自動化に、シアターゲームが有効だという実感をもつ。

おまけに、「ゲーム」なので勉強の感じがない。ということで、子どもも大人もみんな楽しい。これからもシアターゲームをうまく応用して、スクールの生徒たちを楽しませながら、より効果的に英語を学んでもらおうと思う。

「やった!」スクール冬の発表会その2:小学生クラス〜キッズブックス英語スクール

スクールのベテラン級は、小学生クラスの2〜3年生だ。英語を学んで3~4年、ひとりはインターナショナル・スクール生。学んでいる本には、かなりの長文もあるが、発表会では小さな聴衆も飽きない、読み聞かせに適したものを選んだ。

ユーモアの表現に大人も工夫を求められる本、『The Book With No Picture』を、ただ指導者の口移しで覚えたのではなく、ちゃんと内容をある程度理解してから口に乗せているなと思わせる読みをしてくれた!読み手を大人に想定したと思われる本なので、口調も語彙も大人っぽい。それを、3人がよく読みこなしてくれた。

練習時にはゲラゲラ笑ってどうなることかと思ったが、発表はきちんとすぎるほど、きちんと読んだ!

これまでの経験で言うと、発表会を前にひとりひとりに、ちょっとした負荷を与えると、発表会でそれをたいていがクリアし、その後の力が一段高みで定着する。今回はこの本を年少の子どもたちの前で読み聞かせることは、ずいぶんな負荷だった。それに加えて、英語によるMC(各演目の紹介)も分担させやらせた。スクールに入って日が浅いのに、堂々とした声と表現でMCをこなしたHさん。その影響もあってか、みんなが堂に入ったMCっぷり。ダブルの負荷をクリアしてくれた。

小学生も3, 4年になると、そろそろ親の言う通りにはならないから、動機付けも今後は家庭にあまり頼れない。代わりに、スクールが生徒に「エンジン」をかけなければならない。発表会にはこれからも動機付けの装置として、しっかり役目を果たしてもらおう。

『Click Clack Moo The Cows who type』Nさんは難しい語彙もクリア、ナレータのキャラも浮かび上がるようなリードアラウド。Hさんは、ときに生身の会話みたいな読みかたと、いい発声で盛り上げた!手紙部分のTくん、練習するとこの出来だ!「どや顔」とでもいうのか、自信にあふれる表情が印象的。

絵本リードアラウド認定講師講座第9回報告その2〜リードアラウド研究会

リードアラウド指導法のチャームポイント(?)は、なんといっても参加する子どもとのやりとりで読み進めるところだろう。

その指導の要は、問いかけをすること。今年度の認定講座の指導法演習の締めは「問いを立てる」だった。

『The Book With No Pictures』を手に、指導者たちが初対面の子どもたちを前にリードアラウドをする…、ちょっと怖いかもしれない。なにせ、子どもが和めて、話をするきっかけになる絵がないのだ。真っ白のページに文字だけ。「取り付く島がない」本で、読み手泣かせだ。

さあ、この本を使ってどう問いかけていこう?

今回の模擬授業は、ページごとに一人が受け持って問いを立てていく、という方法をとった。始めて見て興味深いことに気づいた。これまでなんども指摘してきたのにもかかわらず、真っ先に先生が説明して始めてしまうことが多いのだ。例えば開口一番、「このページ〜〜〜だね?」って。疑問符はついているが、自分の見解に同意を求めているだけ。

この「〜〜〜」の部分を、どれだけ子どもは言いたかったか。「ああ、先生が言っちゃった」とがっかりする子ども。そんな子ども心が、なかなか思いやれないのが先生であり、大人のようだ。

最初の一語は、「あれ?」でいい。ここで「絵がな〜い!」という声が聞こえるだろう。子どもの声を聞きながら、「普通の絵本とどこが違う?」。子どもの発言を促し、教えたいところを彼らの答えで浮き彫りにする。

この日の模擬授業で、みなさんの「また言っちゃった」の表情がしばしば見られたということは、自分たちが問いにすべきだったところを先回りして答えてしまっている、という自覚があるということだろう。問いを立てるのはまだ、自由自在というわけにはいかないが、できていない自覚があるところには成長があるはず。今後に期待する。

子どもの英語絵本への興味を保たせる鍵のひとつは、問いかけ。自分自身の子ども時代の経験からも、そしてこれまでの教師経験からもこれは言える。問いかけて、子どもの好奇心を喚起すること!

本講座のベテランたちの「問いかけで進める」指導を見ていてもまだ、もどかしく感じることがしばしばある。来年度は、「問いを立てる」を分析的に考えると同時に、問いがどんどん浮かぶようになる「心のストレッチ」を、積極的に参加者のみなさんといっしょにしていこうと思った、最終回だった。

絵本リードアラウド認定講師講座第9回その1〜リードアラウド研究会

早いもので、今年度の最後の認定講師講座。課題書は『The Book With No Pictures』。古典的な名作もいいが、いまの子どもたちに支持されている新作にも挑戦するのがリードアラウドだ。

聴衆である子どもとのやりとりも挟み、読んでいる大人がこの絵のない絵本の「約束」に翻弄されていく。その様を演じるように読みたい。こうでもかと読むに困ることが書かれた「表」の文章と、読まされた大人の本音を書き起こしたような「裏」の文章で成り立っている。

ただお行儀よく読んでいては、面白さが表現できない。まずは、普段からお行儀のいいみなさんの「筋肉」をほぐすのが大切だ。ふた通りの読み方に差をつけるために、volume controlも重要。この二点に表現演習の重点を置いた。

「Ha-ha-ha」と息が続くまで大笑いを続けたり、ペアで距離を変えながら動いて声を送り合ったり。感情をいろいろ変えて「Hello」の声を送る。また、3メートルほど離れた相手に向かって一節を大声で読む。

体を使い、腹から声を出し、感情を表に、とくに相手に向かって出す演習。感情の解放をする演習は、あとの朗読に一番の効果を生んだようだ。

みなさんの思いきりがよくなった。台詞の途中ではなく頭から、感情や声がこれまでよりガツンと出る。この「頭から」が重要。聞いている子どもに、いいショックを与えられるのだ。

「いい大人がとんでもないヘンな声を出す」ところにも、本書の面白さがある。そのためには、しずしず読むおしとやかさは邪魔だ。

 

感情の解放の要となるのが、多用されている擬声語の部分だ。ここは、子どもとのアクティビティにもなるゲームで、一石二鳥の演習をした。

「BLORK」だの「BLUURF」。

まじめな大人をおちょくる音だ。演習前、たいていのみなさんは、音の原始的な面白さを楽しんでいるように見えなかった。ところが、「sound circle」ゲームのあとでは、かなりリラックスして楽しそうだった。

「Tongue Twisters」も効果的だ。意味のない語の連続(gibberish)のある部分は、早口にするとより面白い。練習して、口の快感も体感してもらった。

 

最後にひとりずつ行った朗読では、少し疲れが見えたものの、子どもの笑いもいただけそうなかなり楽しい仕上がりに。

最近めきめき力をつけたHさん。意外にも本書がぴったり。「いい大人がとんでもないヘンな声を出す」効果が抜群だった。「あまりよくない大人」風のわたしなどより、ずっと効果的な朗読か。ざぶとん二枚。

The Book with No Pictures

(つづく)