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オンラインでも開講しているリードアラウドの指導者向け講座(リードアラウドワークショップ)は、1回3時間の長丁場。
大抵は絵本を1冊とりあげて、前半に「耳を傾けてもらえる読み」に受講する先生たちの音読、朗読を磨く。(後半は模擬指導など)
ワークショップの講師としては、ここで課題書である絵本に「かかれていること」と、「かかれていないこと」まで知ってもらうための問いかけをする。
「かかれて」と、ひらがなにしてあるのは、書くと描くのふたつをかけているから。
先日は課題書が『Rosei’s Walk』だった。
本文はたったのワンセンテンス!「メンドリのロージーは庭を横切って散歩に出て、池をまわり、積んであるワラの山に登り、風車小屋の脇を通り、柵をくぐってミツバチの小屋の下を歩いて、夕食前に自分の小屋に戻りました」という物語ともいえないくらいの短編だ。
これを作者Pat Hutchins は、32ぺージの一冊にした。
それができるのも、絵の力があってのことだ。
この本を読むにあたって、ほとんどの大人は文というか文字を見て、文字通り「あっ」と言う間に読み終え、「え?」とけげんな顔をする。
「こんなんで、いいの?」と。
そりゃー、よ/く/な/い/よ!!
絵に描き込まれた物語を見て欲しい。
まずはロージーの顔、どういうニワトリだと思う?
そしてキツネの登場で、場面場面はどうなっている?
それらを、どうナレーターは思いつつ語っているのかな?
ナレーターがあるキャラクターを持って、本文を「語って」いるのだ、という意識をほとんどの読み手がもっていない。
まずはナレーターの存在に気づいて、その人の目でロージーの散歩をくまなく見て、上記の本文を「語る」。
それだけで、「文字を音声にしただけ」の読みだったのが、「語り」として息を吹き込まれ動き出し、情景も立上がる。
このように生きた語りになると、聞き手は耳を傾けるようになる。
これでやっと子どもたちにも情景が少し見えてくるから、聞いてもらえるようになる。
先生たちというか、たいていの大人たちは、あれやこれやいろいろと、絵本で「見落とし」があるものだ。そして、子どもはというと、たいてい見逃していない。絵本作者は子どもをよく知っている。
面白いと子どもが思っているところを、素通りする大人の「読み聞かせ」は、面白くない。
リードアラウドは「英語絵本読み聞かせ」を楽しいものにする推進運動、のようなものと言えるかも知れない。
ワークショップの前半では先生たちに、こうした面白みに欠ける理由のひとつ、「見落し」を拾って、「わー、この絵本、そんなことまで描かれていたのか」と驚いたり、感心したり、そして面白がってもらい、先生自身の心を柔らかくして絵本を楽しみ、その解放された心を声の表現に繋げる場でもある。