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毎日忙しいのに、英語の先生が『The Cat in the Hat』をいつか小学生に教えたいと、指導方法をオンラインで学んだ。
10年くらい前だったら、この本でレッスンできるのは中学生だったが、時代は変わった。
小学校の義務教育で英語が始まり、子どもの英語力に弾みが出てきて、小学生でも本書を楽しめる層が厚くなってきたようだ。
先生は変化に敏感に、そしていい意味での「変わり身」も早くして、次世代の子どもの英語力向上に貢献したい、という熱心な先生がいる。
本書はDr. Seussのロングセラー、米国人なら知らない人はいないと言えるほど広く読み継がれている絵本であり、同時に「読み聞かせ」られるのではなく、子どもが自分で読むreaderと呼ばれる教本でもある。
だが、英語そのものが(教育的)ギャグになっていたりするので、翻訳では面白さが伝わらず、まず日本人の先生として、この本の面白さを英語で味わうのが大切だ。
面白さの素は、the Cat。最初に、この主人公のキャラクターを考えてもらう。
「え?キャラクターと言われても……。」
意外なことを言われたと、驚く先生がいる。
そういえば、日本で英語の先生が、登場人物のキャラクターを考えて英語の本を読んでくれたりすることがあっただろうか。その覚えが、少なくともわたしにはない。
本書は、ヘンなネコが唐突に、子どもだけで留守番する家に登場して、引っ掻き回す、という筋。
ネコの特異なキャラクターがあって成立する物語で、ネコの「人物」としての面白さを際立たせて読まなければ、本書の醍醐味がつたわらない。
なかなかキャラクターを作って読むことに、慣れていない先生も少なくない。だがこれは、読解の授業を面白くするポイントだと思う。
キャラクターを演じるように読むことで、直接的に生徒に内容をわからせることもできながら、「勉強感」が薄く、楽しさを感じさせられる。
役作りなど表現を工夫するうえで、必要な英語の技術として、今回、特に気づいたのは、滑舌の必要性だ。
当たり前といえば当たり前だが、英語非母語者なので、わたしたちの英語のしゃべりは全般的に遅い。
ネイティブなら時と場合によって、自然と話す速度は変わるものだが、日本人の英語は均一的だったり、不自然に遅い。
本書の主人公The catは、ひょうきんで軽口をたたくトリックスター的人物だ。
立て続けに偏執狂的な行動や台詞を撒き散らすが、これが「遅口」でだったら、ちょっと笑いが成り立たない。
本書では、滑舌をよくし、リエゾンを徹底し、べらべらまくしたてる感じにしてこそ、ユーモアが伝わる。
滑舌に関しては、ワークショップ1回程度では、なかなかこなれない。
先生は忙しいけれど、これからの子どもに英語を教えるのに、幅広い表現力をつけたい。
その第一歩、滑舌、緩急自在の語り口は大切な要素だと思う。
英語ネイティブの先生方に聞いたことがあるが、日本人に英語を教えているうちに、どうも自分たちの母語である英語まで、「遅口」になってしまうらしい。
本国にたまに帰って友だちに「いったいその英語、どうしたの?」と言われたこともあるという。
「日本人英語」に感化された?のかも、と。
先生が、親切心でゆっくり英語を言ってくれるのは、ありがたいが、ネイティブ間で交わされる自然な速さ、速さが違う人々の語り口も教えなければ、生徒は話すことだけでなく、聞き取りも弱くなってしまう。
【次回の先生向けDr. Seuss指導方法ワークショップ】『 Green Eggs and Ham』1月8日。
申し込みは11月10日より。