6月のリードアラウド認定講師講座の課題書は、リードアラウドの「まぶたの母」(?)、Mem Foxの『Tough Boris』。
Mem Fox著『Reading Magic』を読んだのがきっかけになって、「リードアラウド」という絵本の読み方、教え方を考えたので、Memはリードアラウドの生みの母。
本課題書はリードアラウドの朗読がぴったりの絵本なのも、当然だ。
ずいぶん、読み込んで来た本なのに、先日のみなさんとのワークショップで新たな発見があった。
文がある最初のページで、海賊のボスの名前、Boris von der Birch が紹介される。
この名前は、長いだけでなくゴロがよくて、リードアラウドすると心地よく、くせになる。
それは、前に発見していて、子どもたちもとても喜ぶところだ。
ところが、そのsoundというか、節数、リズムが、文頭の「Once upon a time」と同じで、共鳴しあっているのだ!
音楽で言えば、同じ節がついている感じ。
よって、この冒頭を読むと、音楽的で心がウキウキしてくるのだ。
みなさんと読んでいて、はっとして、気づいた。
Memさんのにやっとした顔が思い浮かぶ。
読むことの楽しみを、本当によく知っている。
本書、比較的上等レベルの形容詞が連発される。
ただ読んでは、意味が分からず上滑りで詰まらない本、と思われてしまうかも知れない。
形容詞を自分の身体に落として、自分の感情として、それも強烈に外に出さないと面白さが出ない。
読む人のエネルギーが不可欠だ。
自習してきた読み方を披露してから、最後に仕上げの読みをもう一度披露するというのが、本講座のやり方だ。
それなりに、いつもよりいい朗読に仕上がるのだが、今回はその様変わりが特別だった。
みなさんの朗読が、なぜかリーダーズシアター風に数人で読み合ったあとに、一段とよくなることに気づいたのが5月の回だった。
それに習って、グループ分けして役をふって、リーダーズシアターをしてみたところ…
おお!
2組作って、それぞれいい表現になったのだが、Rさん、Mさん、Hさんの3人組。
記憶に残る朗読だった!
適材適所に、偶然なったこと。
そしてシネジーが働いた。
ひとりひとりの力が足し算されたのではなく、3人でかけ算になったよう。
偶然の幸運というものが大きいだろう。
(だから、もう1組は、しょげないように。
各人がそれぞれ高め合っていれば、幸運はつかめる)
どうよかったのか。
ダイナミックな表現が特に得意なMさんが、そのエネルギーを静なる力にして表現したナレーション。全体の物語に対する理解が深まり、最後の悲しみが浮き彫りにされる。
凄みも出た。
Rさん。表現は大きいのだが、時に思い込みのものになったりするのが、仲間と読むことで制御され、自分のなかにある各形容詞の身体感覚が、すらっと出た。
とても自然な、それらしい表現だ。
ここ1年、殻は剥けて来てはいたが、ときに几帳面さが、面白さを殺すことがあったHさん。Rさんの大きく、こってり気味の「He was tough」などのボリスを言い表す台詞を受けて、少し早口にしつつ、強いが8掛け程度の表現をつけた。
これが、一種スパイスになって締まった。
本が息をした。
ブラボー!