リードアラウドらしい指導法には、具体的にいろいろあるが、基本は双方向型指導。
先生が講義(説明)する一方向型の反対。
説明を出来るだけ避けて、生徒への発問とその応えを調整しながら、新しい考えや分からなかった内容をわからせる。
「応えの調整」は、Yes, andというシアターゲーム(Improv.)の基本精神で繋いで行く。
生徒が発問に応えた内容を、いつもYesで受け入れる。
しかし、それでは何も新たなことを伝えられないので、andで新情報を加えていく。
なーんだ、簡単!
頭では簡単と思っていも、意外と難しい。
「yes」と言ったはいいが、その後、andでどう繋ぐかが難題。
yesのあと「…」。
空白になってしまい、「なーんだ。先生はたいして興味を持ってくれなかったんだ」と、結局は応えた相手を失望させる。
こうした小さな失望が貯まって、その時間がその子どもにとって印象薄いものになる。
指導者として、いつそんな場面を作ってしまったか。
これをよく自覚すると、応え方(and…)が上達するものだ。
先日のリードアラウド、本はNight Animals。
ふたりの先生が担当した。
この日、ふたりが Yes, and で「すべった」ところ。
録音をしていないと、なかなか学べないが、たまたまわたしが記憶に留めたところを、後学のため記しておく。
その1.
指導者「この動物は何だと思う?」(オポッサムを指して)
→子ども「ネズミ!」
→「そう、ネズミだね」(会話終了)×
これは、二重に失敗。
まず、不正確。ただのネズミという知識で留まってしまう恐れがある。
教育に携わるものとして、正確さには神経質になりたい。
→「そう、ネズミの仲間でフクロネズミ、opposumって言うんだよ」
と応えたかった。
もうひとつは、「そう、ネズミだね」で、放っておかれて、「正解を出した」子どもとしては物足りない。
先生としてあるチャンスをのがしてしまった。
「ネズミ」それが「フクロネズミ」という種類で、英語でopposumという。これがクラスに伝えられると、応えた子どもは、自分が言った「ネズミ」がクラスのみんなに新知識を与えるきっかけになったことが実に誇らしく思えるだろう。
andで繋げてあげることが、応えた子どもの更なる学習意欲に繋がる。andを指導者が落としてしまうことは、子どもの学習の動機付けの機会を一回落としてしまうことでもあるのだ。
できれば、この後、こう続けたかった。
→「なんでフクロネズミって言うのか知っている?」
→子ども「ふくろがあるから?」
→「そう、opposumはカンガルーみたいにメスのお腹にふくろがあって、そこに赤ちゃんを入れるんだよ」
リードアラウド・ワークショップで仕入れた知識を、先生たちはどんどんこういう場面で使おう。
その2.
指導者:「リードアラウドの約束のひとつは?」
→子ども「声に出して読む」
→指導者:「そうだね、じゃ声に出して読んでみよう」
STOP!
不正確だ。Yesだけで放置しては、リードアラウド研究会としては大変困る。
パートナーもつっこまず。仕方なく大島が引き継いだ。
→「そうそう、声に出して、感じを出して読むんだよ」これが、◎
Yesで肯定するだけではなく、ちゃんと正しい情報に仕立て直すこと!
どれだけ、リードアラウドの約束を大切にしてきたか。
不正確なものを広めないよう、細心のご注意をお願いしたい。
Yes,andに関するNGではないが、このときに気づいた他の、そしてしがちなNGも記しておく。
指導者:「感じを出して読む、という約束があるけれど、先生が今、読むから、それがどんな感じかあててね」
こういった発問は、さすがに慣れてきた。
子ども:「恐い感じ!」
ここまでは、予想通り。だがその後。
「じゃ、これは?」と違う読み方で、また指導者が読んだ。
これが、NG!
子どもの気持ちでは、先生が楽しそうに「感じを出した」読み方をしたから、自分もやってみたい。
楽しめるところなのに、指導者が子どもにふらず、スルー。
そのまま次の「説明」を始めてしまった…。
もう、ここでつまらなくなる。
どうしたらよかったか。
→指導者:「そう(Yes)、恐い感じに聞こえたね。じゃ(and)、みんなも恐い感じで読んでみよう」
ここでも、Yes, and だ。
そして、ここではandに繋げるのは、子どもたちによる実践。
指導者ばかりが、読み続けていては双方向ではない。
これら、たまたまわたしが、この日、生徒側に座って気づい(てしまった)たベテランの「すべり」。
全体に安心感があるベテランの仕事だからこそ、気になった点だ。
簡単そうと思われているかもしれない、Yes, and 。
この日、ベテランでもなかなか難しいところだと再認識できたことに感謝!
ベテランにも難しい、Yes, andが滑らかにできるようになる演習を考える、いいきっかけになった。
この日の子どもたちには、また今度来てね。
もっと面白くするからね!