今回の課題書は、とても絵本としては現代的な「盗み」をテーマにした一冊。ブラック?な結末だからか、「絵本ノアール」とも称されることもある。
本文は全編、主人公の小魚のモノローグ。ということで、読むのにあたって、ベテランの認定講師のみなさんには、キャラクター造りをしてもらった。
今年度の本講座で、特に強調しているのが、このキャラクター造り。
性別、年齢から、体格や体型、性格、育った環境、運動が好きか、趣味など書き出して見たり、語り合うことで、語り手(小魚)の声や喋り方、表情、しぐさなどにだんだんキャラクターとしての個性が出てくる。
練習していて特に難しいのは、登場したとたんにそのキャラに切り替えるところ。
近頃、実にこのキャラクター造型が瞬間的に、次々とできる天才、と思うのが、沢田研二さん。歌手だが演劇のように一曲一曲を、物語として、その登場人物を演じるように歌うのだ。
その秘訣を聞かれ、本人はちょっと謙遜して「衣装と照明と化粧とイントロの音楽」のおかげと言っているけれど、衣装を変えず次々と、まったく違うキャラの歌を演じているのを見たことがある。やはり、うまいのである。
絵本のリードアラウドは歌と違って、商業的に成り立たないから当たり前だが、なかなかプロ的で手本にもできる人が少ないので、ベテラン歌手の例で失礼する。
最近改めて気付いたのは、絵本の朗読と歌の表現の仕方は似ているということ。
どこが似ているのか。
・絵本の一話と歌の一曲のよくある長さが3〜4分と、「勝負」の時間が似ている。
・一話一話または一曲一曲に「声」がある。キャラクターがある。
・印象つけたい言葉、フレーズがある。
・インタラクティブ(唱和するなど)
など。
たとえば、前述の沢田研二さんの作品でキャラクラターのバラエティの多さを考える。
おとぎ話の王子様、恋に狂おしい若者、夢見る少年、若いヒモ、余裕綽々の色男、痩せ我慢の男、「すけこまし」の軽い男…
実によく、それぞれの歌でドラマが出来上がっている。だから、振り付けもそれらしいのが、自然につけられる。
たとえば、スーダラ節のような手足をして歌う頭の軽い男の役や、きりりといい角度でポーズが決まる、痩せ我慢の昔かたぎの男の役、「すけこまし」だとウインクやら帽子投げ、指しゃぶりが出たりする。全部自分で考えるというから、お見事。
彼自身、そういうフリをつけることでも、役に入っていけるんだろう。たくさんなる持ち歌のメドレー(youtubeに多数アップされている)、特にライブステージでの、ちょうどいい間ときっぱりしたキャラクター転換は圧巻。
絵本の朗読で、こういう切れのよさというか、成り切り芸を見てみたい。
今回の講座で、印象に残ったのはベテランHさんの小魚のキャラクター。いかにもいそうな、いいかげんな「ヤツ」。それでいて、愛嬌があるから最後にペーソスが漂う。思い切りよく、照れずにできていてみんなの笑いよけいさらっていた。
次回の発表時の、みなさんの小魚のキャラクター楽しみにしています。
沢田研二論?で長くなったので、リードアラウド講座報告、つづく。