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「おうち英語」と呼ばれる、家庭でおもに家族によっておこなう子どもの英語教育。それを実行している「おうち」が増えてきている。
そこで、わたしのスクールでの指導経験や自分の家族との経験で、そのような「おうち」の親子を見知っているので、老婆心ながら心配していることを書いてみる。
親であり、「おうち英語」を実践しているひと。
自分がエネルギッシュで、ある程度英語が使え、几帳面というかまっすぐまじめな部分をお持ちの、特に子どもと一緒にいる時間が相対的に他の家族より長いかもしれない、あなた。
親としては「英語で話すことを習慣にしよう」と真剣に考えているので、「今、この機会を逃したら英語習得が遅れる」といった強迫観念に囚われていないだろうか。
いつも、我が子に英語を使わせようとピリピリとしてしまう。
そんな親の気持ちは痛いほど、自分の姿を見るようで、よくわかる。
そして今なら、わたしは子どもの気持ちも、わかる……。
(いつのまにかお母さんが「English」とうるさく言い出して、なぜだか、その前まで不自由を感じず話していた言葉が、禁止されてしまった。どういうことだ?)と子どもはよくわからない。
お母さんに甘えたい、わがままを言いたい、気持ちを伝えたいときに自然に浮かぶのは、日本語なのに、お母さんは気持ちを聞いてくれる代わりに「in English?」と、に厳しい顔をする。
拒絶された、と感じるだろう。
特に、何か欲求があるときにも「English!」 と言われたら、火急のようだったりすると、子どもだって爆発しそうになる。
大人だったら「いい加減にしろ!」と言いたい場面も、力が弱い子どもは、泣くかその気持ちを押し殺す。
3〜4歳だったら、笑顔も消えるだろう。
先日、ある会場で英語絵本リードアラウドをしていたところ、不思議な感情の起伏を見せる子どもがいた。
きゃーと、子どもらしく楽しそうにはしゃいだり、質問にはきはき答えたかと思うと、次の場面では視線を落として椅子に深く腰掛け暗く、質問をふっても返事を拒否する。
何回かそのパターンが繰り返されたので、よく観察すると、少し離れてしっかりとその子に視線を送っている母の存在があった。
耳をそばだてると、ときたま、
「You can say it in English」
などと、我が子に「応援」を送っているのも聞こえた。
英語で我が子がさっと返事をしたときの、母のすっきりした、誇らしげで、嬉しそうな顔。
反対に黙ってしまったときの、もどかしげな顔。
ハハーン、これが、不可解な子どもの表情の変化の原因。
親子でシンクロしていたわけだ。
子どもだって笑わないとき、退屈な表情などがある。
が、暗い表情はあってはいけない。
「おうち英語」を完璧にしようとして、子どもに暗い気持ちをもたらせては、親子関係によくない。
日本で日本人の子どもとして生まれたなら、母語は日本語。
だから、母語ならしっくり表現できるが、英語でそうはいかないところがあるのだろう。母語でふざけたり、冗談で受け答えをしたくとも、母が求めるのは英語ばかり……。
欲求不満もつもるだろう。
随分昔のことだが、わが家の場合は、当時4歳児が爆発した。
母としての人生の転機が、そのときに来たのかもしれない、と今思うほどの大事件だった。
「ママのこと嫌いだ」
と宣言されたのだ。
こういう「爆弾」的なものを持つ子どもの場合は、爆破されて気づかされるが、穏健な子どもの場合は、不満や悲しみを押し込めてしまって、親が「やりすぎ」に気づかないこともある。
我が子の表情から、心の注意信号を読み取るのは、日常からは難しいかもしれない。写真や動画でときどき客観的に見てみるといい。