「自宅で子どもに主に親が英語を教えること、その学習法のこと」と定義される「おうち英語」を実践しているような親子を、ちょくちょく見かけるようになった。
「おうち英語」でも、いわゆる「オールイングリッシュ」とまではいかないが、親子で英語を意識して学んでいるケースは、たくさんある。
英語絵本のリードアラウドイベントには、そんな親子があふれる。
そこで、これまでよく尋ねられた質問であり、
第二言語習得論(SLA)でも頻繁に取り上げられる問題について書いてみる。
「(英語ネイティブではない)親の(訛りのある)英語が、子どもに移らないか」。
気になるところだ。
科学的に英語習得がどう行われるかを研究する学問、SLA、でのこれまでの結論は、
主に英語圏に移民した英語が母語でない親と、英語圏で生まれた二世の子の間での研究から導かれたもののようだが、
「親の英語の訛りは、子どもの英語の発音に影響を及ぼさない」
とのことである。
「ただし」、
とここからが重要だ。
「親が教え込まなければ」。
子どもは耳がいい。
英語圏で幼稚園やに通い出せば、親の英語を聞くのは家でせいぜい数時間に満たなくなる。
親の英語を耳にしても、他のなまりのない英語、テレビや学校、友だちの英語の時間が長く、影響力は少ない。
ただ、「こう言いなさい」と親たちが自分の英語を意識的に刷り込むと話は違ってくる。一緒になまる、ということらしい。
わがスクールであるとき、ひとりだけ、スクールでは聞くことのない「日本語なまり」というか「カタカナ英語」というか異質な英語を、幼くして使う子どもがいた。
英文を驚くほどよく読み下せるのだが、おそらくネイティブが聞いたらよく分からない。
単語単語につながりがなく、アクセントもないか間違っている。
いわゆるカタカナに置き換えた英語らしきもの。
わたしたち指導者が、その子どもに指導してきた痕跡が感じられないのは衝撃だった。
それから、特に注意して一対一の時間も使い、英語らしい発音と文の流れをつかませ帰宅させるのだが、翌週にはカタカナ読みでガチガチになって帰ってくる。
なぜ?
悩んでいたとき、ふと空き時間にその親子が読みを復習する場面を見て、わかった。
「ここは、こう読むの。『〜〜〜』。言ってごらん。」「『〜〜〜』、もう一度。」
優しい声だが、お母さんが「repeat after me」と我が子を前に大奮闘していたのだ。
熱心さには頭が下がる。
だが、これが「教え込み」だと合点がいった。
お母さんの英語の読み下し方は知識としてはあっているのだろうが、口から出る音としては、間違っている。たぶん、自分でも違いが聞き取れていない。
でも、「読み方」をカタカナ読みの知識として知っているから、熱心に教えてあげている。
そういえば、昔の英検テストにあった。
発音記号が書かれた単語で、「どの発音があっているか」を選ぶ問題だ。
このお母さんならお茶の子さいさい、満点だろう。
しかし、発音は知識ではなく、実技だ。
発音に親の影響はでない、といっても、子どもに尊敬されている英語知識のある親が「こう読みます」と我が子を教え込むと、子どもは素直だから、その読み方を真似る。
まったくネイティブにふれることなく「おうち英語」を現在進めるなら、ネイティブの音声で聞かせてくれるAIを活用しよう。
ただし、
子どもには親の声が一番影響がある、
という研究もあるので、AIを主に活用するのは、お母さんとお父さん。
AIで確認、それを親が子どもに聞かせる。
一緒に聞こうね、というのもいい。
携帯電話のなかで眠っているネイティブの目をさまさせて、どんどん発音させよう。
おうち英語と子ども(1)(3)
過去のブログ:「おうち英語」(1)https://readaloud.jp/2023/09/21