Uri Shulevitz作『Snow』の深読み

最近ではオンライン認定講師講座でとりあげた本だが、リードアラウド冬の「定番」は、本書『Snow』。

寒くなったから、ここ最近、きっとわたしの頭のなかにこのイメージが浮かんでいたのかもしれない。

 

そこに今朝、啓示のように本書の意味が「降ってきた」。

 

子どもの雪を見る喜びを表現している、とこれまで主題をとらえて読んでいたけれど、その深層では、「雪」は独裁体制下、ソ連に従属していた作者の故国ポーランドの「自由」とか「民主主義」などを象徴している、ということ。

 

今頃わかったのか、と言われるだろう。だが文字通りSnowの本として、見事に完成された絵本で、深読みなしでも、名作だということが、言い訳だ。

 

自己弁護すると、うすうすそのテーマについて気付いていたようではある。

「冬の寒々とした街の景色が、雪で一変する。その変わりようが、美しく感動的。これは東欧の街でしょうね」などと、発言した記憶がある。

 

本のなかで、街には雪がどんどん降り積もるのに、ラジオとテレビでは「No snow」という場面がある。

先日、この感覚が手に取るようにわかる経験をしたことも、今朝の「啓示」につながったのかもしれない。

 

それは、街中の液晶大画面が小池百合子都知事のコロナに対する「官製発表」のようなものを映し出していたときだった。

カメラの前の作った顔や表情で、これまた作ったかもしれない数字などを口に乗せ、パクパクしている。

現実を見ていない、官製放送。

とたんに、「これに似た経験、前にしたゾ」と思って、よく考えたら『Snow』だった。

 

作者の故国の街、ワルシャワのある時代、さぞかし「発表」と事実が乖離していたのだろう。

その「発表」を信じ、目の前のsnowにさえ、すぐに消えてしまう、と語り合う大人。

そんな大人を横目に、snowはどんどん降り積もり、主人公の少年の歓喜は極まっていく……。

 

雪で覆われた灰色の街は、大雪で一面真っ白になり、それまで「It’s snowing」(自由の時代は来ているよ)と言っていた少年は、最後に「Snow!」(これだよ)(ほら!)と一言、顔を輝かせて叫ぶ。

 

いやはや、なんて骨太な絵本なんだ。

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