初版が1962年に出て以来のロングセラーで、わたしは本屋としてもずっと売っていたのにもかかわらず、指導者としては、一度もリードアラウドしていなかったのが、本書だ。
「初めて白人以外の子どもが主人公になった絵本」といわれるエピソードには、興味をもっていた。
今回しっかり読んで、バックグラウンドについても読んで、好きな一冊となった。
ナレーターは落ち着いた抑制的な人で、キャーキャー騒ぎ立てるところはないけれど、幼い頃の喜びをまだ昨日のことのようによく思い出せる、まだ澄んだ目も持ち合わせていて、子どもやコミュニティを見る目が温かい。
抑制の効いた、形容詞や副詞の少ない本文のなかに、閃光のような驚きや喜びや、子どもにはどん底のように感じられる悲哀が、まるで練り込められているようだ。
絵本を読みだした初期の頃は、なんてこと! これらを読み過ごしていた。
受講のみなさんには、今回、これら声高に語られていない感情を、いろいろ発見し、声に込めてもらおうと演習をすすめた。
最初に本を分析して、頭で読む。
無垢な子どもの可愛らしさ、それと、灰色の都会の下町を美しく塗り替える雪の美しさや驚き、これらをテーマととらえ、次に心で読む。つまり表現に繋げる。
まず、表現を一番に考えた読み方を演習した。
冒頭の、One winter morning、ここには「驚き」が込められている。
これを表現できるか。ここで、聴く人の心を掴む。
センテンスごとに、そこにある気持ちを、声の要素である、pitch、volume、paceを適宜に使って声に込める。
注意を促されるとできるが、注意を怠ると「ただ読んでいる」になってしまうことが多い。
なんの感情もない言葉がぽこぽこ出るのを、モグラたたきのように叩いて行くような演習だ。
この「表現を一番に考えた読み方」の他に、「聞いている人に理解してもらうことを一番に考えた読み方」を、指導者として演習した。
それは、「だれが(何が)」「どうした」という、主部と述部を聞き取りやすくした読み方だ。
そのような読み方をして聞かせた後に、それらが答えとなるような発問をする。
例えば、「”Winter morning” “Peter” “looked”」 と””部分を強調気味に読んでから、
When was it?
What’s the boy’s name?
What did he do?
などと、質問を続けると、正答率が高くなり、生徒たちのやる気も増してくるものだ。
本書程度の語数の絵本の場合、絵が本文の意味を50%程度は説明しているが、残りの50%は文の理解が必要だろう。
そこで、重要語句を声の強弱、高低、緩急で際立たせ、感情も入れることで、メリハリをつけたリードアラウドをすることで、理解させられる。
指導者の読み方ひとつで、読解が進む。指導者は責任重大だ。
さあて、みなさんの『The Snowy Day』は、どのような仕上がりになりますか。
プレゼンを楽しみにしています!