今回の課題書は、世界で200万冊売り上げた革新的な本『Press Here』。
なにが革新的か。本文が全部、読者への呼びかけというか、読者にアクションを働きかける台詞になっている。いわゆるインタラクティブな作りであるところ。
朗々と読み上げるという種類の本ではなく、身近な読者にいろいろな動作を指示し、出てきた動作を受けて次に進む作り。「指示」と「受け」の台詞が、そのまま本文になっている。
となると、口調を考え、fluencyを磨くことが必要。そこのところを演習した。
本書に適した口調は、この日、参加したベテランたちならではの課題となった。
自分ではない誰かを作る。どういうキャラクターが、この語り手にいちばん合っているのだろう。分析しながら考えた。
……絵本片手に聞き手(子ども)を集め、あれやこれや動作を指示し、絵を動いているように思わせる。そんな架空の世界に誘い込む語り手のキャラクターは?
イメージとして提示したのは、『不思議の国のアリス』に出てくるウサギ、『チャーリーとチョコレート工場』に出てくるウォンカ。映画で演じた俳優をイメージしてもいい……。あ、どちらもジョニー・デップ(!)。または、映画版『熱海殺人事件』の二階堂伝兵衛(仲代達矢)。
いわゆる狂言回し、トリックスター。ハーメルンの笛吹き、人さらい?
このような、子どもや人々を架空の物語に誘う、強いエネルギーを持つキャラクター、テンション高い人を作って読むことを目指した。
イメージをディスカッションしたあと、皆さん、朗読がだいぶ変わった。
「えっ、変わりましたか?」と思った方は、ぜひとも自分の朗読を録音して、耳を鍛えてみて。結局、自分が一番いい審査員だ。
イメージすることで変化する声の表現。実に奥深い。
そして「頭」でイメージできても、なかなか「身体」(声)を思うようにできないもどかしさも感じる。
次回まで、みなさんもご健闘を。
また、今月お休みしたみなさんも、期待していますよ〜!