英語えほん千夜一夜第20夜~Bark, George

Bark, George文・絵Jules Feiffer , $16.99 レクサイル指数:  目安のレベル:初級

 ニューヨーク市の伝統あるフリーペーパー、『The Village Voice』。1986年、その紙上を飾る刺激的でウィットに富んだ漫画でピュリッツアー賞を受賞した漫画家が、本絵本の作者だ。「Anxiety in the big city(大都会で感じる不安)」を作品のテーマにすることが多い。その漫画同様、刺激とウィットに溢れる本書だが、テーマにも共通するものがありそうだ。

 NYの一等地、五番街を散歩していそうないかにも「セレブ」風の母犬が、お坊ちゃん然とした息子ジョージに、誇らし気に「吠えてごらんなさい(Bark, George)」と言う。ところが、息子の口から出たのは「Meow」。

「ジョージ、『ニャー』は猫なの。犬は『ワン』ですよ、さあ」と、再び促すと「Quack-quack」。「『ガーガー』はアヒル。さあ犬らしく」と辛抱強く待つ母。でも3度目に「Oink」と聞いた時には我を忘れ、目をむき出し歯ぎしり。「『ブー』は豚、犬は『ワン』」。

4度目に「Moo」を聞いた母犬は、頭を抱え獣医に息子を診てもらうことに。そこで自信満々の獣医が、ジョージの口に手を入れると……。あっと、猫が出て来た。さらに奥に手を入れると、アヒル。そして豚。それから、必死の形相のジョージの口の奥の奥から獣医が引っ張り上げたのは、そう、牛だった。この後、やっとジョージが犬らしく「arf」と吠えて、母犬も獣医も狂喜して……と、ここまででも子どもに大受けする本書だが、このまま予定調和で終わらない。

 獣医のところから、大都会の雑踏を通って帰宅する途中、母犬は犬らしくなったわが子を自慢したくて、再び「Bark, George」と言う。さあ、ここでジョージはどう吠えたか?

最後のページを読んだ子ども達は大騒ぎ。ピンときてニヤニヤする子、「なぜ、なぜ?」と事態が飲み込めない子、ジョージのお腹を透視するように見て自説を展開する子などなど。そして、大人の頭にはAnxiety in the big city—このフレーズがよぎる。

 動物の鳴き声は英語でどう表すか。英語入門・初級者にはこれだけでも、また表情豊かな絵だけでも楽しめる本書。加えて、物語のひねりが大人をも楽しませる、超名作!

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