暑いさなかの講座、この日はとくに身体を使った。
朗読に表現をつけるための方法として身体化が有効と、本年度はしっかり演習を組み込んだためだ。
課題書『Night Animals』は、人間だけでなくスカンク、オポッサム、オオカミ、クマ、フクロウなど登場者がたくさん。
技巧的にするなら、6人(匹?)を読み分けるかなりのテクニックが必要。
でも、リードアラウドでは技巧を極めるのではなく、自然に即興でできるようにするための演習をしている。
シアターゲーム(インプロ)での演習だ。
部屋をなるべく広く空けて、出来るだけ自由に動き回れるようにして演習開始。
動物の名を挙げ、みんなはその動物になったつもりで歩き回る。
サイドコーチングで、「体全体で表現している?」「ワンパターンではない?」など、かけ声をかけて修正させる。
このとき、たいへん驚いた。
H.S.さんだ。
うまい。
うまくなった、というのか、それとも、もともとあったものが、やっと外に出たというのか。
反応も速く、背中、頭、手足と動きが立体的。
てらいがまったく消えた。
この「一皮むけ」っぷりが、朗読に表れ始めている。
H.S.さんの今後の朗読に、目が離せない。
もし万が一、身体化と朗読を結びつけるのが難しいと感じたら?
それぞれの登場者のせりふを読む直前に、その動物の「ふり」を入れてみよう。
吠えたり、噛み付く格好だったり、ほんのちょこっと実際にする。
すると、演習でした大きな動きの記憶が蘇り、言葉に表現として「らしさ」が乗ってくる。
大勢が動き回っている中で、H.S.さんは自分に注目させた。
そこも評価できる。
・気づき、その1
よく動いている中でも、気になるのは、動きがパターン化して、機械的になっているひと。
本人も楽しくないし、そうなると観客も楽しくない。
登場者になった気になることが、楽しむポイント。
「おなかすいたな」「あ、ハエ。やだな」「疲れたなあ」「あ、あれはなんだ」…、いろいろな場合を即興的に考え、その場合の登場者としての行動をとる。
笑わせようと考えるのではない。
なり切る。
・気づき、その2
先生という仕事をしているみなさんは、文字に頼る傾向が大変強いこと。
せっかく身体で表現する演習をし、かなり良い線で表現できていたのにもかかわらず、本を手にしたとたんに、平面的な読み下しにすっかり戻ることがあった。
くるっと変わる、変わり身の速さ。これは何だ?
多分、無意識になったため。
気を抜いたときに起こる。
予防は、気を抜かず、身体表現ということに自分を集中させること。
Y.Y.さんも、身体での表現で健闘していたのに、何かの拍子におみごとに、読み方がただの伝達のように平坦になった。
「なに、その読み方?」
と、反射的なわたしのものいいは、不快だったかもしれない。
でも、弁解するなら、それまでたいへんよかったのに、あっという間の逆戻りで、本気で驚いたため。
本人、はっとして、それからがまた驚き。
またまた瞬間的に、いい表現にスイッチオン。
とても印象的な場面だった。