朗読を極める!〜英語絵本リードアラウド・ワークショップ第8回報告:その1

英語絵本のリードアラウドは、私淑する日本語表現よみ提唱者、渡辺知明さんにならえば、朗読の3つの段階(音読・朗読・表現よみ)のうち、表現よみを目指している。

ワークショップのひとつの柱、「朗読」に関しては、
ただ声に出して読む(音読)のではなく、
工夫して読む(朗読)だけでもなく、
作品を表現する(表現よみ)ところまでを目標にしている。

全10回の本ワークショップ、11月で8回目を迎え、今回は『Puff, the Magic Dragon』に取り組んだ。

ワークショップ、ウォームアップ後は、予習で自分なりに仕上げてきたままに、さっそく全員に読んでもらう。

参加者の予習の仕上がりは、かなりのもので、この点に関してはいつも誇らしく思う。

世の中には、ただ英語が読めるからと初見で「読み聞かせ」をしてしまうといった、蛮勇をふるうひともいるが、本ワークショップでは見かけたことがない。

今回の課題書は、「おとぎ話」。
興味を持ってみなさんの読みを傾聴したところ、大きな部分で気になる以下のような点が浮かび上がった。

・文(字面)を追って読み上げるだけで、表現がない。

・表現はあるが、その場面の感情にそぐわない。

・癖のある読み方や声が気になって、物語が聴く人の頭に入らない。

・遠い感じで、物語が描けない。

予想通りといえば、予想通りの問題点だ。
用意したこの日の演習が、ぴったり。

たとえば、こんなもの。
「Puff」などの単語に、用意した8つほどの感情を込めて、相手に伝える練習。
これはシアターゲームのひとつだが、なかなか相手に伝わらないものだ。

ある人は「guilt(罪悪感)」を込めたつもりだったが、相手には「fear(恐れ)」と伝わったり、なかなか難しい。

短い練習でも得られることに、言葉に感情を込めるという神経の使い方がある。

これは換言すれば、普段は「先生らしく」、単語の意味を説明してしまう先生方に、説明ではなく伝えること、つまり表現することの練習だ。
こうすることで、生徒にわからせる力をつけるのである。

『Puff, the Magic Dragon』の難しさのひとつは、7回ほど繰り返されるサビの部分の読みだ。

文面は同じでも、それぞれ違った感情で読むべきところだろう。

機械的に変えることもできるが、聞いていて退屈だ。
やはりここは、文のそとの解釈を深めて、感情を考え、それを文に乗せたい。

用意した演習は、サビ部分の7種類の感情をリストアップして、その気持ちを込めて読み、ワークショップの仲間に、その違いが伝わるかどうか聞いてもらうというもの。

全員に全部の感情での読み分けをしてもらう時間はとれなかった。
これは、宿題として練習すると、必ずや結果がでるもののはず。
どうか、練習してみて欲しい。

録音して自分の耳も肥やそう。

気になった「癖のある読み方や声」について。

主に、語り口の選択違いからきている。
課題書は、口調のなかでも「物語口調」を選択するのが自然だろう。

それに対し、「演芸口調」をとっているひともいた。
言葉のところどころに力を入れ、笑いとユーモアを呼ぶような口調、多くの聴衆の注意を引くような語りぶりだが、このおとぎ話には合わない。

悲しい場面なのにこの口調で語ると、ちょっとした「いじめっ子」口調になる。

修正方法としては、物語をきちんと読むこと。
自分が「読みやすい読み方」ではなく、本の内容に合った読み方をすること。

また、口調というよりは、言語としての取り違え、が違和感の原因というひともいた。
課題書は、文学言語なのだが、理論言語のように読んだ。
講義や講演のような感じに近い。

この読み方の特徴は、聞き手と語り手の立場が対等だったり平等ではない。
上のものが下に聞かせる、という語りだ。

絵本を語るのに、これでは子どもとの距離が開きすぎる。
近くに子どもがいて聞いている、という場面をイメージして読もう。

また全員に言えることは、それぞれまだ残っている言葉の「ゴロゴロ」した感じ、未消化の部分については、感情はひとまず脇に置き、滑舌や発声を意識して何度も読む練習を。

そして仕上げに、細切れではなく、全体の感情の流れを考えた読み方の練習をするように。

(つづく)

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