動物の物語をたくさん読んでいた小学生低学年から中学年の頃。
ドリトル先生シリーズ、シートン動物記、ファーブル昆虫記、子鹿物語…数え上げればきりがない。
だが、登場する動物が苦しんだり、最後に死んでしまうとかなり落ち込む。
あるとき、「そうか、読まなきゃいいんだ」と気づいて、動物の悲しい結末が待っていそうな本は読まないようにした。
しかし、久しぶりにその禁を破ってしまった。
『The One and Only Ivan』を手にとったら読みたくなって、読み始めてしまった…。
Ivanというゴリラが一人称で語る物語。
寂れたショッピングモールに併設された動物の見世物小屋が舞台だ。
人間に飼われて、他のゴリラを知らない。
それだけでも胸が苦しいのに、足が悪いのに芸をしなければならないゾウや、捕獲され親から離された子ゾウまで出てくる。
半分位読んで、さらに悲しいことが起こりそうになって、「防衛本能」が働いた。
ちょっと飛ばして、最後の25%位を読んだ。
ああ、よかった。
そして、驚いた。
100%フィクションだと思っていたら、一部、本当の物語だった!
ネタバレになるので、何が起こったかは記さないが、これが主人公のゴリラのIvan。
Zoo Atlantaという動物園で生涯を終えた。
そこに行くまでは、本当にワシントン州タコマのショッピングモールに飼われていた。
これが、本書の下敷きになっている。
ということで、ちょっといい展開があって安心して全部読める。
ゴリラは饒舌ではなく、本文はそれに合った語り口で読みやすい。
ただその言葉は静かだが、詩情があり、ときに人生を考えさせる重みがある。
2013年度ニューベリー大賞受賞作。