ドラマを見て演技を考える~リードアラウドの朗読力upのために

年末のせいか、ミステリーチャンネルでは日本の70~80年代のドラマを放映している。

同時に、地上波でも新作のオムニバス形式のミステリーを放映していた。

両方を見て、気付いたことがある。
旧作の演技者たちの演技がリアルで厚みがあること。
新作は、たまたまということもあるだろうが、薄くとってつけたような演技が目立つ。

ある旧作の場面が頭から離れない。

東北へ向う急行列車の中。
芦田伸介さん演じるところの、銀座の画廊社長と、佐藤慶さん演じるところのライバル画廊の支配人が偶然車内で出会い、腹を探り合いながら社交辞令的な会話を交わす場面だ。

どちらも売れる画家の作品買い付けの旅なのだが、競争上、行き先を知られたくない。
それぞれ嘘の行き先を言い、差し障りのない会話を続けるのだが、車掌が切符を確認しに登場し、それぞれの嘘がばれる。

「丁寧に社交辞令的会話をしながら、腹をさぐりあう」とト書きにあったらどう演じる?
これだけでも難しい。

まず、それぞれのキャラを立てなければならない。
何千万円の絵を売り買いする銀座の画廊の社長は、人品卑しからず。
だが、商人としてぎらぎらしていよう。
同業者だが、もう一方は雇われ人だが、やり手の大番頭だ。
一段下がって相手を立てながら、やり手の雰囲気もあるだろう。

そして、最難関であり、このふたりの役者が鳥肌が立つほどに上手く演じたところはここ。

「行き先について相手が嘘をついていることがわかったが、次には自分のがばれると諦念しつつ、でんと構える」社長。
「先に嘘がばれるが、ひょうひょうとし、社長の嘘を知ってむっとしながらも聞かなかったように態度に出さない」大番頭。

それから、それぞれが嘘をついていたことを、別の話題を通して皮肉る。

ああ、くらくらするくらい、何重にもしかけられた演技の応酬。
このふたりの名優が、会話の文字面だけでは伝わらない腹のなかを演じ合う名場面だ…。

対する新作オムニバスドラマ。
おそまつもいいとこ。
対象視聴者をばかにしていると思える演出も演出だ。

自分で考えられないからなのか、おそらく与えられた単純な表面的表情と表現しかしない主な登場者たち。
「腹に一物」感がゼロの、「謎の人物」たち。
まったく謎めかない。

特に見目麗しいタレント(?)の場合の薄っぺらさが、ひどい。
途中で、チャンネルを変えた。

さあ、リードアラウドで朗読力も磨こうというみなさん。

台詞で、できるだけ内容を汲み取らせようというリードアラウド。
まずは、よい台詞回しを、俳優の演技で聞き分けてみましょう。

日本語のドラマも、英語のドラマも、演技がうまい人たちが出ているドラマを見てみましょう。
または、コマーシャルのナレーションでも。
学ぶ姿勢で見ていると、学べることがたくさん。

最近たまたま見た、いい例と悪い例。

× 市川海老蔵さんのコマーシャル。ナレーション。声を腹から出しているだけ。ただの深い声で、単調。

○ David Suchetさん演じる『名探偵ポワロ』。

○ 『オックスフォードミステリー・ルイス警部』。主演のふたりもいいが、脇に名優がぞくぞく。圧巻。

○ 柄本明さんのいろいろ。近作では『松本清張〜坂道の家』で演じた布団屋のおやじ。リアル!

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