先生稼業は難しい。
わたしの先生経験は、学生時代の塾講師から始まって、もうかなりの長さ。
小学校から高校まで、文科省の指導要領に合わせた指導から、私塾、そして幼児から大人、外国人、アスペルガー症の子の個人指導まで、まるで経験に飢えているように、次々と経験してきた。
そして、リードアラウド(RA)を始めた。
今は、その指導方法と、今も続いている経験を、ひとりでも多くの先生や先生志望の大人に伝える時期と思っている。
リードアラウドには、一期一会の出会いが多々ある。
もちろんその場合、初対面の先生だから敬愛もない。
無関心か、ひょっとすると警戒心さえ抱いているかもしれない。
心得その1
最初の5~10分で、初対面の壁を破る。
リードアラウド開始前に、会場に来ている子どもたちと会話する。
自分が緊張していると、子どもにすぐに察知される。
深呼吸し、リラックス。
しばらく観察後、いい機会を見て、会話に加わる。
だいたい、何かを尋ねるのが、いい。
「今日が、初めてなの?」「何歳?」など。
そして、RA開始。
「リードアラウド、4つ(場合により3つ)」の説明と、子どもと一緒にデモンストレーションから始める。
ここで、重要なこと。
3分以上、子どもに聞き役をさせてはいけない。
TVコマーシャルの長さを参考に。
多分、2分以内が理想だ。
最初の5〜10分に、子どもを聞き役として黙らせたままにしてしまうと、「退屈感」がその後の会場(教室)をも覆ってしまうことも。
この冒頭のデモンストレーションの時間内に、子どもの心を弾ませることが、非常に大切だ。
とは言え、手本を見せたり、聞かせたりしなければいけない時間もある。
たとえば、RAの約束で「感じを出して読む」のデモンストレーションのとき。
やりようは、ある。
先日、小学校の1年生16人との『Go Away Big Green Monster!』では、こうやった。
「今からクイズです。リードアラウドのある約束を守った読み方(1)と、守らない読み方(2)両方で読みます。よーく聞いているんだよ。どう違うか、それはどんな約束か答えてね」
と、子どもたちが聞き手に回る理由を明らかにする。
今、何のために、この知らない「おばさん」の話を聞かなきゃならないのかを、
はっきりさせるのだ。
「クイズ」に答えるため、とわかれば真剣だ。
おもむろに、深く静かな響く声で始める。
生徒ひとりひとりの顔を見て…
「Reading 1:(Green Monsterなんか、どっか行っちゃえ〜!と、圧倒的な演技で、感じを出した読み方をする)」
先生としての真剣さと、演技者としての(なりふりかまわない?)読み方のギャップに、子どもがニヤニヤする。
また、大まじめに
「Reading 2:(平坦な読み方をする)」
そして尋ねる「さあ、何が違った?どんな約束だと思う?」
挙手。挙手。
林のように手が挙がる。
「大きい声を出す」
「怒ったみたいに言う」
「嫌なやつ、出て行けという感じ」などなど。
大正解、タイトルの意味も解説していないのに、解釈まで飛び出した。
いろんな言い方で答えるが、それらをひっくるめて、「その場面、その絵の感じや本をかいた人の気持ちを考えて、その感じで読む」とまとめる。
もう、やりたくてしかたない顔になっている子どもたち。
それを見逃さない。
「ちょっとみんなも、やってみようか」
こうしてすぐに、子どもの出番を作る。
「恥ずかしがらないでいいのだ」のメッセージを、わたしの表現に見たのだろう。
出る、出る、ぞくぞくと、いい読み方が出た。
「うまい!よく言えたねえ…。でも、ひとつ、興奮して忘れた約束、指でなぞる。今度はそうやって読んでごらん」
つい忘れてしまう、最初の約束「読んでいるところを、指でなぞる」も同時に指導する。
「言う」のも大切だが、「読む」指導がRAの主眼だ。
このあたりで、自信がなさそうな子の顔を見つけたら、
「ほら、もうひとつの約束、『わからないところがあっても、最初のうちはムニャムニャでOK』だったね」と、くじけそうな心をサポートするのも怠りなく。
「『ムニャムニャ』あってもなくてもいいから、約束3つを使って、みんなで読んでみよう」
こうして、最初の5〜10分で盛り上がって始まったRA、この日の60分はめでたし、めでたしで終えられたのであった。
[お知らせ]
9月29日 9:45-10:45
表参道 クレヨンハウスで、『Go Away, Big Green Monster!』のリードアラウド