アメリカの大学や大学院で科学を学んでいたころ、「ああ、もっと知っていればなあ」と嘆いたことのひとつに、ギリシャ・ローマの神々の名前。
正確に言うと、その神々の英語式の読み方や綴り方、語源とその意味をもっと意識的に学んでいればなあ、という嘆き。
たとえば、ゼウス。
Zeusで、別名がJupiterで最高神で雷神でもある。
中島みゆきはゼウスのことを歌っていた?!
ポセイドンがPoseidonで、Neptuneが別名。海の神。
『ポセイドン・アドベンチャー』が海関係の話と想像がつく。
ヘルメスはHermesで、別名Mercury、水星でもあり水銀のことでもある。
ディオニソス、Dionysusは聞き慣れないと思ったら別名Bacchusで、これなら酒の神として有名だ。
ガイアはGaiaで、大地の神のことで地球を指し、別名Terra、それを知っていればterrestrialなんて単語を初めて見ても、「地球か地上関係かな」と意味を知的に推測できる。
ニーケーはNikeで、勝利の女神。でも英語発音ではナイキ、スポーツ洋品のブランドだ。だからNikeロゴを見て「ニケ?」と読んで笑われたひとは、「ギリシャ風に言うとそう発音する」と、教養あるところを見せて仕返しで笑い返す。
この神話、「神々」の物語というだけあって、たくさんの神様が登場する。
怪物も出てきて楽しく、小学5、6年生頃から楽しめる物語だ。
とは言え、古典なのでなかなか現代の子たちに敷居が高く感じるのかもしれない。
そこで…こんな現代風の物語が出来て、大いに人気を博している。
Percy Jackson & the Olympians のシリーズ。
オリンポスの神々を父とし、人間の母を持つハーフ(the Half-Blood)、現代の子たちの物語にした。
このハーフたち、夏の間はやっぱりSummer Campに入るところが愉快。
夏をSummer Campに入って過ごす多くの北米の子たちには、とてもリアルだろう。
12歳の主人公は、それまで6回も転校を余儀なくされて、「問題児」(多動と難読症)と自他ともに思っている。
しかし、転校の前には、他の人には見えない何かしら不可思議で危険なことが起こっていた…。
どこにでもありそうな読者に身近な設定から、滑らかに話は不思議な冒険に入っていく。
実はこの少年は海の神ポセイドンを父とするHalf-Bloodの一員で、ゼウスに狙われるある業を背負っていることを、1巻の中で知ることになる。
出てくる、出てくる神々の名前が。
それぞれが、何のシンボルか、何の神であるかが、読み進むうちにわかってくる。
登場人物に親しみ出すと同時に、ギリシャ神話に詳しくなっていくという案配だ。
取っ付きにくいものに、取っ付かせるのがうまい。
主人公の少年、Percyの語りで書かれているので、読みやすい。
展開が速く分かりやすい。
登場するハーフたちが、超能力は別とすれば、まるで読者の周りにもいそうなキャラクターで、感情移入がしやすい。
人気があるのも納得。
この夏は、このシリーズの2巻、the Sea of Monsters が映画になり、アメリカでは封切られたところだ。
3Dで見たが、なかなかの迫力。
特撮もなめらかでリアルだ。
Percyの腹違いの兄弟、1つ目のCyclops(英語読みサイクロプス、ギリシャ語読みキュクロプス)のキャラが愛らしかったり意外とハンサムで、ティーン受けする要素もたくさん。
教養高い英語を学ぶ役に立つ、ギリシャ・ローマ神話。
敷居の低い、人気児童文学からも楽しく学べそうだ。