毎日乗る地下鉄内で耳にする大学生同士の、勉強に関する会話には、いつもがっかりさせらる。
大学が学生に求める学問のレベルの低さや、大学がそうしなければならないような、学生の質や態度の低さや悪さが、垣間見られるからだ。
だが、希望はある。
今、3年生になった1大学生に、大学入学時から定期的に会って英語指導をしているが、その青年に会うと日本の大学生への希望が見えてくるのだ。
もちろん、その人のもともとの素質や、家庭環境、そして中高で受けた教育のレベルの高さがあってのことだが、英語力がぐんぐん伸びているのだ。
いくつかこの生徒に与えてきた課題を挙げてみる。
○NYタイムズの記事から1つ選んで英語で要約を書く・日本語の見出しをつける
→始めの頃は、週に2記事程度でも、苦労している様子が見て取れたが、半年過ぎる頃から「毎日やらないと、気がすまない」と、言い出した。
それは、要約が楽になり始めた頃でもあった。
月に1回程度会うなかで、嬉しいことに、この生徒の場合には毎回ハードルを上げる必要性を感じた。
よって、要約に関しては、1日分は口語で要約し録音することも加えた。
○「名演説集」から2つの演説を選び暗唱する
CDを活用しての暗唱なので、棒読みでなく、正確かつそれなりの抑揚等もついた成果をいつも聞かせてくれる。
この演説集は、先日全部おわった!
○英語非母語者用の英語ニュースのディクテーションを、ネットを利用してする
始めはゆっくりなものを選んでいたが、今はそれを「ゆっくりすぎ」と感じて、よりネイティブ的な速度のものを聞いて要約を書くようにしている。
これも、今や毎日するように。
時間が足りないので、NYタイムズの要約はこれに代えた。
○ラテン語、ギリシャ語起源の英語root集の学習
練習問題付きのものを1冊。
3ヶ月ほどで終了。
○『Test Prep』、ネイティブ中学生用の標準テスト準備問題集
これは、PSAT(プレSAT)の準備にもよいもので、各学科が入っているもの。
ネイティブ用なので問題文も英語、というところが大いに、この生徒の読解力を付けるのに役立った。
数学も、問題自体は解けるが、その前の解説や用語などを学べる点がいい。
3ヶ月ほどで終了。
大学院留学を本人が口にしたのを聞き、2ヶ月前に渡した。
先日は、サンプル問題をひととおり1回の実際のテストのようにやって、自己採点。
ここから、弱点を補う練習をすることに。
○TOEFLの単語攻略本(Princeton Review社刊)
TOEFLの「でる単」のようなものだが、最近の記憶心理学の理論に基づいて、各単語に「イメージ」がついている。
経験的に、単語にイメージがつくと覚えやすい。
そして、その単語が高頻度で出題されるのなら、さらにいい。
TOEFLの勉強で素晴らしいのは、実際に大学や大学院で必要な基礎英語力がテストされること。
実用的だ。
TOEFLは、TOEFL自体のための勉強を強いているのではなく、大学や大学院で楽に学問が学べるための下地を作る。
数百語が収められているこの問題集を、先日は「夏休み末までに半分マスター」を課題に果たした。
いつも、本人が思うよりも、ほんのすこし上のハードルを設ける。
本人が「これをやることが、ためになる」と納得する教材にする。
指導するわたしも、この青年の伸ばし方が分かってきたし、本人も「短所」と思っていたところ(「愚直に物事を継続する」など)が、実は英語学習的には「長所」だと知り、自信を持ち出した。
英語で自分の専門分野(経済学)の話も、そこそこ出来るようにもなってきた。
さあ、あとは留学先で、女子にももてるように、「アメリカ文化一般常識」を伝授するとしようか。
「ジャスティン・ビーバーが何者か」など芸能界や政界の有名人とか、TVドラマとか、ファッション雑学とか。
あと1年、どこまで伸びるか。
どの大学院に行こうか。
もしかしたら、「選び放題」になるかも。
楽しみな大学生である。