Lane Smith作のIt’s a Bookは、パソコンでの読書派 vs. 紙の本での読書派の、読書を巡る会話で成り立った絵本だ。
出版されてから1年近く、英米の児童書ベストセラー・リストに名が挙がっていた人気の本でもある。
「リードアラウド」誕生の地でもある私立小学校では、3,4年生は混合クラスで「リーダーズ・シアター」(RT)を行っている。
台詞が主な絵本で、精神年齢的に中学年にあったものを使ったリードアラウドのバリエーションと位置づけている。
本年度最初の3,4年生グループ、20人とのRTは、このIt’s a Bookを使用した。
内表紙から物語が始まる。
「It’s a mouse. It’s a jackass. It’s a monkey. It’s a book.」
これだけ書くと、まるで日本のかつての英語教科書のようだ。
唐突に「This is a pen」と始まる、前世代のパターン。
だが、そこは名をあげた絵本作家作である。
絵が多くを語る。
もう、そこで生徒たちが乗ってくる。
It’s a 〜 が、必然性をもって使われていることがわかる。
「ぼく、ネズミだよ」と挨拶するネズミに、主人公2者が続いて名乗る。そして生き物ではないが、話題の中心物、本が、大きな字で「It’s a Book、本をお忘れなく」と存在を誇示する。
もうここから、楽しく表現練習ができる。
RA経験者が多いこの日のクラスは、さすがだ。
「待ってました」とばかりに声を変え、強さを変え、しょっぱなからのいい表現!
さて、リーダーズ・シアターである。
年齢が低い場合の、最大のチャレンジは「どこが自分の読むところか」を理解すること。
そこは、3,4年生。
本書は台詞が語り手によって色分けされていて分かりやすいこともあり、この日は、ほとんど問題なし。
RAにしても、RTにしても、指導者としてなすべきことは、なるべく全員を引き込むこと。
そのコツは……。
簡単な台詞を使って、表現で乗せる(遊ばせる)。
本書では、たとえば
「Nope. It’s a book.」。
口を尖らせて、Monkeyが言う台詞だが、「no」ではなく「nope」。
そこが、生徒には新しく、楽しい。
簡単であり、表現で遊びがいがあり、おまけに本物の英語っぽい。
ここあたりで全員の顔がほころんで、この日も「ほっ」。
あとは、たいへんよい流れで進む。
3年生3人と、帰り道でいっしょになった。
「先生、nopeのときの顔、おかしいよ!」
3人が、「Nope!」と言いながら、(Monkeyの?わたしの?)顔まねをした。
生徒のこういう感想や反応は、教師への「褒め言葉」。
そう思えるのも、小学校で最初に教えた「恥じらいを知る」頃から、はや30年もたったからか。