ポートランドで食べる野菜と果物

新聞のコラムに『作家の口福』というのがあって、そこで先週、内館牧子さんが「田舎くさくて力強かった昔の野菜」という題で書いたエッセーを読んだ。

「やっぱりそうなんだ」と思った。
昔の野菜、特にトマトの味が、今と昔で違うのだ。

それだけでなく、東京で食べるほとんどの野菜と果物の味が、わたしの思い出の、それこそ「口福」な味と何だか違うのだ。

その味のことは、ほぼあきらめていた。

ところが、(生まれも育ちもそこではないのだが)10数年来「新田舎・故郷」にしているアメリカ、オレゴン州ポートランドのファーマーズ・マーケットの野菜と果物を知った。

そこで、その懐かしい野菜や果物の味を「ミッケ!」したのである。

ポートランドの夏のトマト。
ああ、あのトマトなのだ。
夏のおやつだった。
緑のところは青臭い、でも赤いところのゼリーのような種部分と、今のもののようにざらざらしない、ぷりっとした果肉がなんともうまいトマト。

それだけではない。
昔の味は知らないはずの、日本登場は比較的「新顔」のチンゲンサイだが、これはポートランドで食べるのと似て非なるもの。
株から立ち上がる香りが、日本のものからはほとんど抜けている。
有機のものは、ちょっとだけ香るようだが。

ああ、カリフラワー、芽キャベツも大違い。
キャベツの仲間は、農法によって香りが抜けやすいのか。
または、鮮度の違い?

材料がいいと、なるべく手のかからない料理でこそ、美味しく食べられる。

冬は、キノコ。
値段はずっと東京のキノコのほうが安いが、オレゴンの野生または小さな農場での野生種栽培キノコは、香りと歯触りが違う。
エノキ、ナメコは絶品。

冬、春のリンゴも、こぶりだがパリンと割れて、瑞々しく香り高い。
夏はブルーベリーが有名だが、オレゴンのイチゴも凄い。
赤黒く路地で熟したそれは、日本のショートケーキには似合わない姿だが、目が丸くなるほど甘い。

赤肉のキャンテロープ・メロン。
3ドルほどだが、5000円の夕張メロンに勝つ糖度で、皮すれすれまで果肉が美味しい。

ちっちゃなマスカット・グレープ。
岡山のマスカットと大きさを比べたら、イクラとトビコ程違うが、味は互角か。

もうきりがない。

夏にアメリカに行く予定があったら、ぜひ、足を伸ばしてポートランドに。
野菜と果物の本来の美味しさを味わって欲しい。

子どもは、OMSI(オレゴン科学技術博物館)が夏中主催するサマーキャンプに入れるのも、いい経験に。
1日から1週間のプログラムまで、いろいろ。
大自然の中での人間を考える、絶好の機会だ。

子どもがキャンプに行っている間に、大人は料理三昧。
キッチンが必要なら、ご一緒しましょう!
夏近し。

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