アメリカの子育て〜動物園と絵本

ここ2,3年で一番、英語圏の絵本界で話題になった絵本といえば、I Want My Hat Back
わたしにいわせれば、その「余波」で 続編This Is Not My Hatも、コルディコット大賞を受賞した。

この I Want My Hat Back は、何でそんなに話題になったか。
本書の主人公、クマが自分の大好きな帽子を盗んだウサギを殺してしまう(と想像に難くない)ところが、「衝撃的」だったため。

衝撃的というので思い出すのが、Sendakの In the Night Kitchen
主人公の少年が、すっぽんぽんになる場面が「衝撃的」で、販売を自粛したり禁止したり、図書館に置かなかったりすることがあったこと。

どちらの「衝撃」も、事実や真実を見せられたことに対してなのが共通する。

その結果、理想主義が生きるアメリカの出版界や教育界が選んだのは、子どもには真実を適切な方法で見せること。
どちらの本も、今ではベストセラーだったりロングセラーだ。

先日、オレゴン動物園に行った。
「給餌タイム」にぶつかり、見る動物ほとんどが食餌中。
Big Catsのコーナーで、立て看板が通路の真ん中に立っていた。
「見るにあたって要注意。各自の判断で」(のような意味、英語でどうだったか忘れてしまった)

こう書かれていると、好奇心の強いわたしは覗かずにはいられない。
チータだったか、ヒョウだったか……
自然が生かされた広めの屋外獣舎に、肩甲骨を立ててワイルドな目付きで行ったり来たりするbig cat。
よく見ると、口に血がついている。

さっと視線を移すと、獣舎のほぼ真ん中に茶色い塊。
シカだ。
ぐったり目を閉じていて、腹あたりから血が出ている。

…Wild catsに「給餌中につき注意」って、こういうことだった。

この動物園は、ほぼ自然に則った方法で動物たちに餌を与えるようにしている。
そして、その場面は公開し、見る見ないは個々の子どもの保護者に判断をまかしている。

衝撃が受け入れられる子か、まだ準備出来ていない子か、判断するのは大人に負担だが、子どものときから事実を見られるようにという方向性に、わたしは賛同する。

「本当だから、しょうがない」という観点も、人間の成長には必要だろう。

絵本に関していえば、先の「衝撃的」なはずの2冊は、子どもたちにあっさりと自然に受け入れられている。
それどころか、I Want My Hat Back などは、大人気でリードアラウドの定番になりそうだ。

「発禁」にされないで、本当によかった。

動物園に関しては、飽食気味の大人の「食育」にもなっているような。

「肉を食べる」意味を、オレゴン動物園での経験以来、噛みしめている。
あ、やっぱり「衝撃的」だったらしい。

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