第二言語を習得した役者に学ぶ

朝日ウィークリー』という英語と日本語が半々くらいの、英語学習者向けの週刊紙がある。
そこで興味深く読む記事のひとつに、有名人がどう第二言語を習得したかのインタビュー記事がある。

新春1月1-6日号で、ケイン・コスギさんのインタビューが興味深い。
栄養ドリンクのTVコマーシャルで、「ファイトー!」と叫ぶひとだ。

ハリウッド・スターの子としてロサンジェルスで育ち、英語が母語だ。
父が日本語、中国人の母が北京語、家の外環境が英語だったので、「言語で混乱」。
こういう子に対して、「とりあえず英語に集中したほうがいい」とアメリカ人の先生が言うのも理解出来る。
コスギ家も、そう指導を受けてからは英語一本で子を教育し、ケイン君は英語のモノリンガルになった。

ところが、日本が好きになり、日本で仕事をするように。
「こんにちは」程度から、日本語を学んでいったという。

「仕事に必要」ということは、言語を学ぶ上で実に強い動機になるものだ。
だからケイン君が頑張れたとも言えるだろうが、その学び方にわたしたちも学べるところがある。

ジムなどで、友人を作ったこと。
そして、彼だけでなく何人もの日本語習得者から聞いたことでもあるが、テレビ。
それも、アニメとバラエティー番組の視聴だ。
バラエティー番組を、わたしは好まないが、日本語学習者にはその「早口」なところや「身ぶり」が役に立つらしい。

……そこで、思い出した。
わたしもそういえば、英語学習者として、アメリカのトークショーとコメディーショーを真剣に聴いたっけ。
息子は、4歳のときにディズニーの英語版『ピノキオ』にはまり、何度も何度も視聴し、ある日突然、
「I’m a real boy!」
と、象徴的なフレーズを、完全な発音と抑揚でしゃべりだしたっけ。

ケイン君の台詞の学び方も興味深い。
「…とにかく繰り返し読んで練習しました。文法もできる限り理解するようにしました。ものにしないと、台詞を一生懸命言っているなあ、と見る人に分かってしまいますね」

日本語が楽になった今は、
「演技に集中できるようになりました。…今は、(中略)…言葉の深い意味をより一層考えたり、微妙なイントネーションにも気を遣ったりします」とのことだ。

リードアラウドも、まったくこういった台詞の勉強と同じだ……。
英語として、「ゴロッ」とした感じがあるうちは、一生懸命な感じで、子ども達にも指導者の「緊張」が伝わり、リラックスできない。
指導者も「英語が楽」な感じになりたい。

このケイン君、今は漢字の猛勉強中というが、今後の抱負でもいいことを言っている。
「…日本のことをもっと知りたいので、漢字だけでなく、日本の歴史やことわざも勉強しています。そういう知識を広げると、台詞の中にも『気づき』が生まれてきて、役づくりにも深みが出ますね」。

そう!
「たかが絵本」と思うなかれ。
わたしたちが選んで読む一流の絵本には、多くの知識が詰まっている。
そこに描かれた異文化(動物の世界だったりするが)を読み解いていくと、読み方(台詞のようなもの)にも「気づき」が生まれて、深みが出るはず!

P.S.
あのCMで、「英語ネイティブなのに、ファイトオーはないでしょう?」と思っていた。
やはりケイン君、苦労して「当初はどうしても、fightの発音から、全体を短く言ってしまうんです」と。
そこで「実は、『ファイト』よりむしろ、『ホワイト』という意識で言っていました(笑)」。
栄養ドリンクじゃなくて、歯磨き粉ですね(笑)。

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